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※舞台は何故かゆっくりが当然のように存在している外界です。 ※オリ設定満載です。 ※ぬるいじめです。そして割と愛で気味です 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる新たなる生命体。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎる。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして私はそんな不思議に満ちた生物とはこれと言った縁もない普通の女子大生だ。 「やっぱり頑張った自分へのご褒美は塩辛に限るわ。む~しゃむ~しゃ、うめ~」 忌々しい試験期間を無事かどうかはまだ分からないが乗り切った私は、昼間っから大学の敷地内のベンチで塩辛をつまみながら、ビールを飲んでいた。 「んぐんぐんぐ・・・ぷはぁ!ZUNビールうめぇ!めっちゃうめぇ!」 彼氏は居ないし、友達も女同士の友情そっちのけで男とデート。 そんなわけで私は一人寂しくビールをかっくらっていた。何で大学でとか、そんな野暮なことは聞くな! 「ゆっくりしていってね!」 「んあ?」 すると突然何者かが声をかけてきた。 声の主のほうに視線をやるとそこには体高20cm程度の、赤いリボンがトレードマークの餡子生命体“ゆっくりれいむ”がいた。 「なんだ、ゆっくりか」 イケメンだったら良かったのに。まあ、イケメンが昼間からこんなところで酒盛りしてる奴に声をかけてくるわけがないんだけどさ。 「ゆゆっ!おねーさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりせざる得ない人だよ、悪いか?」 人間の気持ちなんて何一つ理解しちゃいないド饅頭をねめつけつつ、ビールを胃袋に流し込む。 「ゆ!よかったね、おねーさん!れいむがゆっくりできるおねーさんといっしょにいてあげるよ!」 「そうかい、そうかい・・・そいつはどーも」 鬱陶しそうに、なおかつ投げやりに応えるが相手は所詮餡子脳生物ゆっくりだ。邪険にされていることに全く気付いていない。 そして、ぽよんとベンチに飛び乗って私の太ももに頬を摺り寄せると・・・ 「ねえ、おねーさん!それちょうだい!」 厚かましくも私の自分へのご褒美の塩辛を要求してきやがった。 「だめだめ、あんたにやる塩辛はないよ」 しっし、と手を振ってあっちに行けと訴えるが、れいむは全く諦めようとしない。 「ゆううううう!!」 ぷくぅっと頬を膨らませて私を威嚇し始めた。 結構膨らむのな。見た感じ体積が1.5倍くらいにはなっている。 とは言え、そんなものが私に有効なわけが無い。 「おいおい、人にもの要求するときに態度か、それ?」 苦笑しながら膨らんだ頬を突いてみる・・・・・・柔らかい! 「おおぉ・・・!」 あまりに触り心地が良かったので、調子に乗って突っつきまくる。 「ぽーにょぽーにょぽにょ、アホまんじゅう~♪」 「ゆっ!おえーさん、やめ、やっ、や、ゆっくりっ、やめてね!」 そんな感じで遊んでいると、れいむは相変わらず頬を膨らませながらも嫌そうな表情を浮かべて文句を言ってきた。 「やだ」 満面の笑みを浮かべて即答してやった。 と言うか、そんな風に言われたら・・・やるしかない、って気分になるじゃないか! 「うりうりうりうりうり~♪」 「ゆうぅ~!おねーさん、おねがいだよ!ゆっくりやめてね!」 もう頬を膨らますのを止めていたれいむは、目に少し涙を浮かべながら懇願する。 しかし、そのうっとうしくも愛らしい表情が私の中に眠るSっ気に火をつけた。 「や~だ~」 つんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつんつん・・・ 「ゆぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅううううううう~!?」 手を止めるつもりが微塵も無いことを悟ったれいむは少しずつ後ずさって行く。 そして、私の手はそれを追いかけながら執拗に頬を突きまくる。 「ゆううううううううう!?」 ぽろぽろと涙を零しながらも必死に後退し続けたれいむは、勢いあまってベンチから落下してしまった。 「ゆぐっ!?」 「あ・・・お~い、大丈夫か?」 落下したれいむの様子を伺うためにベンチから身を乗り出すと、底の部分を空に向けた逆立ちのような格好でれいむがひっくり返っていた。 「ゆわああああああああああん!おねーさんのばかぁ~・・・!ゆっぐ・・・!・・・ゆっぐ」 あらら、大泣きしちゃったよ。 その姿は流石に可哀そうだったし、私自身調子乗りすぎた節もある。 だから、れいむを抱え上げると膝の上に乗せて、頭に怪我が無いか見てあげた。 「あ~・・・ここ、ちょっとコブになってるなぁ~」 「ゆっ!?おねーさん、いだいよお゛お゛お゛お゛!」 どうやらコブに触れてしまったらしく、れいむはまた大声で泣き始めた。 「あははははは~・・・悪い悪い。さっき欲しがってた塩辛あげるから、それで許してくれないか?」 その言葉を聞いた途端、れいむはとても嬉しそうに微笑む。もしかして、私はゆっくりの嘘泣きに騙されたか? まあ、いいかと心の中で呟きながら、塩辛の蓋を開け、箸でつまんで膝の上のれいむの口へ持っていってやった。 「ゆゆっ!むーしゃむーしゃ、しあわ・・・ゆうううううう!?」 れいむは4,5回咀嚼してから、クワッと目を見開いて、塩辛を吐き出した。汚いなぁ・・・そしてもったいない。 「ゆんゆんっ!おねーさん、こんなしょっぱいのたべられないよ!!」 「ん?そうか、口に合わなかったかぁ~」 「ゆぅ!ほかにないの?!」 よっぽど口に合わなかったのか頬を膨らませて怒りをアピールしながらも舌を出しっぱなしにしている。 器用なやっちゃ。 「他?そうだなぁ・・・」 ガサゴソと近所のスーパーの袋を漁ってみると、何故か売っていたジョロキア、たこわさ、焼きスルメ、カカオ99%のくそ苦いチョコレート、メントスとダイエットコーラなどが出てきた。 あとは500mlのZUNビールが4本ほど入っている程度だ。 「じゃあ、たこわさでも食うかい?」 「ゆぅ?それおいしいの?」 「ああ、美味しいよ」 首をかしげるれいむに微笑みながらたこわさを取り出してさっきと同じように口の中に放り込んだ。 「むーしゃむーしゃ、しあわ・・・ゆぎゅうううううう!!?」 あ、また吐き出した。人の膝の上で吐き出すものだから私の安物のジーンズが汚れてしまっている。 「あんたねぇ・・・食べ物を粗末にしすぎだよ?」 また、さっきと同じように舌を出しているが、今度はこきざみにぷるぷる震えている。 「だ、だっでぇ・・・ごんなのだべでないよ゛っ!」 「えー、美味しいのに・・・」 そう言って私は2口ほどたこわさを食べる。うん、やっぱり美味しい。 「おねーさん!ちょこあったでしょ?れいむちょこがたべたいよ!」 ああ、本当に厚かましくて可愛いなぁ~。だが、あのチョコは私の夜のおやつなんだ。 「えー」 「ね、おねーさん?」 露骨に嫌そうな顔をする私を潤んだ瞳で上目遣いに見つめてくる。 う~ん、別に可愛いとは思わないな。 「よし、じゃあ・・・お姉さんとじゃんけんで勝負して私が100勝するまでに1回でも勝てたらチョコをあげようか?」 「ゆ!じゃんけんってなに?ゆっくりできるもの?」 おおう、嬉しくなるほど予想通りの反応。とりあえず、私はれいむにじゃんけんのルールを教えてあげた。 「それなららくしょーだよ!おねーさんがいっぱいかつまでにれいむがいっかいかればいいんでしょ?」 「ああ、そういうことだ。それじゃ、さっさと始めるよ?」 そう言うとれいむは思いっきり空気を吸い込んだ。 「じゃんけ~ん、ぱー!」 れいむを見ると思いっきり頬を膨らませている。ちなみに、これは手の無いれいむのために私が決めてあげたグーのポーズだ。 「ゆぅ!まけちゃったよ!」 「よし、一勝!でも、まだまだ99勝もしなくちゃならないからなぁ~・・・」 「ゆゆっ!こんどはまけないよ!」 「よし、それじゃ2回目。じゃんけ~ん、グー!」 グーを出し、れいむを見てみると下を向いて両目を閉じている。これはれいむにとってはチョキに相当する。 「やった、2勝目!」 「ゆううう!また負けちゃったよ!」 「まあまあ、まだまだ先は長いんだし。三回目行くよ?じゃんけ~ん、チョキ!」 れいむは背中を向けている。別にじゃんけんに飽きたわけではない。これがパーのポーズなのだ。 「よし、三連勝!でも、先は長いなあ~」 「ゆゆ!またまけちゃった!でも、まだまだがんばるよ!」 そんな感じで、私とれいむは15分ほどひたすらじゃんけんを続けていた。 そしてその間に私が事前の呼吸や、向きの変更を見てれいむの手を把握していることに気付くことは無かった。 「はっはっは!98連勝!」 「ゆううううううううう・・・」 流石にここまで負け続けてはのん気なれいむも涙目にならざる得ない。 「どぼぢでがでないのおおおおおお!もうやだ!おうちかえる!」 「まあまあ、あと2回だけなんだし。頑張ろうや、な?」 ぽろぽろ涙を零しながらもれいむが「う゛んっ!」と勝負に合意するのを確認すると、再び掛け声をかけた。 「じゃんけん、パー!」 一方のれいむは下を向いて目を瞑っている。つまり、チョキだ。 「ゆ?ゆゆっ!れいむかったの!?」 信じられないといった風な表情で私に確認をとるれいむ。その姿に思わず噴き出しそうになるのをこらえながら応えてやる。 「ああ、そうだよ。お前の勝ちだ。だからチョコレートを食べても良いぞ?」 「ゆゆっ!やったね!これでゆっくりできるよ!」 じゃんけんが終わって、再び膝の上に戻ったれいむは歌らしき何かを口ずさみながら、私がチョコレートを差し出すのを待っている。 「ゆっくりできるよ~、ちょこれーと♪とっても~あまいよ、ちょこれーと♪」 ごめん、このチョコは凄く苦いんだよ。 「はいよ。今度は吐き出すなよ?」 「ゆ!そんなことしないよ!むーしゃむーしゃ、しあわ・・・ゆぶふぇええええええ!!」 奇声を上げながら、れいむは今日一番と言っても過言ではないほど盛大にチョコレートを吐き出した。 エレエレエレエレエレエレエレ・・・。 うわぁ、ついでに餡子も吐き出しやがったよ。ジーパンがグチョグチョだわ・・・まあ、いいけど。 「おいおい、あんた吐き出しすぎ・・・」 呆れながら、お仕置きの意味も兼ねてれいむの両頬をつまんで引っ張ってやる。 「ばっへぇ・・・あほほえーほいがかかったんあほん!」 しかし、この饅頭柔らかいっすねぇ!本当に皮が良く伸びる。 そうやって調子に乗って引っ張っていると 「ほへーはん、ゆっふひやべでね!」 「びろ~ん、びろ~ん、びろりろり~ん♪」 ああ・・・このほっぺの柔らかさは反則だわ。すごく気持ち良い。 「ゆゆっ!まりさのれいむになにをするんだぜ!」 「んあ・・・?」 不意にどこからともなく声が聞こえてきた。辺りを見回して声の主を探すと、そこにはゆっくりまりさが私の足に懸命に体当たりしていた。 「まりふぁ!」 「れいむ、もうすこしのしんぼうだぜ!まりさが、すぐにたすけるんだぜ!」 そう叫びながら必死に体当たりをしているが、全く痛くも痒くもない。それどころか、まりさが作用に対する反作用でダメージを受けている。 その様子を見ていると、なんとなく気の毒になってきたので、私はメントスとダイエットコーラを掲げて、まりさも一緒にゆっくりしないかと提案した。 もちろん、れいむの頬を引っ張るのも止めてあげた。すると、あっさり私のことを許してくれた。 「ゆ!まりさもおねーさんといっしょにゆっくりするぜ!」 「も」とは言うものの、れいむはそんなにゆっくり出来てなかったけどね。 「はいよ」 まりさの口にメントスを10粒ほど放り込んでやる。 「うっめ!めっちゃうめぇ!」 「ゆ!れいむもほしいよ!」 「チョコを全部食べてからだよ」 「ゆううううううううううう!」 「ははっ、冗談だよ。ほら、口をあけて?」 今度はれいむの口にメントスを放り込む。 それから独り酒のつもりが思いのほかにぎやかな酒になったな、などと思いながら2匹にダイエットコーラを飲ませてやった。 「「ゆ~♪」」 口の中にメントスを貯めたまま、コーラを口に含んだ2匹は見た目は意地汚くて見苦しいが、非常にゆっくりしているように見えた。 確かにそう見えたのだが・・・ 「「ぼぉ!?ぼぉぼぼぼおおおおおおぼぼっぼぼおおお!?」」 突然、2匹そろってコーラを噴水の如く吹き上げた。それも、ちょっとゆっくりの常識からは考えられないほどの勢いで。 「・・・・・・はあ、何なんだよ、これ?」 私はコーラまみれで呆然とするしかなかった。そして、傍らではコーラを吹き終えた2匹が再びエレエレしている。 テストも終わったので人通りは少ない。とはいえ、流石にあの噴水が人目を引いたらしく、人が集まってくる。 そうして、いつの何か出来上がっていた人だかりに気付いた私はスーパーの袋と2匹を抱えて、自宅へと逃げ帰った。 「っち、ここじゃゆっくり出来ないね!!」 「で、とっさに連れて帰ってきたけど・・・どうするよ、これ?」 現在独り暮らしをしているアパートに戻って、コーラまみれの体と衣服をどうにかするために風呂場に向かった私は、今になってここがペットの飼育禁止であることを思い出した。 いや、そもそも飼うつもりなんて微塵もないんだけど・・・どっちにしてもこいつら、どうしたものか? 「ねえ、おねーさん!れいむたちべとべとだからからだあらってね!」 「それからみんなでゆっくりしようね!」 なんと言う厚かましさ。だが、そこが良い。何だかくせになるのものがある。 そのゆっくりっぷりを見ていると「さっきのコーラ噴射のことをもう忘れてるのかよ」とか「何で途中でこいつらを捨てなかったんだ」とかそんな疑問は些細なことのように思えてくるよ。 「・・・まあ、何とかなるか?」 とりあえずさっさと服を脱いで、お湯をためながられいむとまりさを洗ってあげる。 「ゆ~、ゆ~♪」 「気持ち良いか?」 「ゆ!すっごくきもちいいよ!」 「そうかそうか。そりゃ良かった。でも、お前ら水苦手なんじゃなかったっけ?」 「ずっとつかってるとあぶないよ!でも、みずあびはすきだよ!」 浴場の床にあぐらをかいて、足の上にれいむを乗せた格好で、桶に溜めたぬるま湯でタオルを濡らして、丁寧にれいむの体を拭いてやる。 まりさはその傍らで、気持ちよさそうに目を細めるれいむをじっと見守っている。 「ゆゆっ!おねーさん!そのぬるぬるすごくきもちいいよ!」 当然といえば当然だが、こいつらにとってボディソープやシャンプー、リンスを使うのは初めての体験だろう。 そのあまりの気持ち良さにうっとりとしている。途中、シャンプーが目に入って絶叫していたのはご愛嬌か。 2匹を洗い終えてから、私自身の髪や体を洗い、それから2匹と1人で湯船につかる。 と言っても、れいむとまりさを湯の中に放り込むわけにはいかないので、れいむには風呂桶に入ってもらい、まりさは私が抱きかかえることにした。 外よりもずっと温かい風呂場でほっと一息をつく。 「おねーさん、すごくやわらかいね!」 生意気にも私の胸に頬ずりしながらそんなことを抜かすのは抱きかかえられているまりさ。 「・・・ん~、そうか?」 もっとも、そんなことを言われたところで自分では良く分からないのだが。 「うん、れいむのほっぺよりきもちいいよ!」 普通なら「パートナーに怒られるぞ」とか「ゆっくりと比べんじゃねえ」とか「もう、まりさってばえっちぃ」とでも反応するところなのだろうか。 しかし、私はれいむの頬の触り心地を思い出しながら、痴漢をする男の心境がなんとなく理解できるなぁ、なんてことを考えながら「そりゃ、どうも」と適当に返事しておいた。 それからまりさの頬をひっぱって、その柔らかさにしばし感動し、「愛でお兄さんはおっぱいフェチなんだろうか?」などとくだらないことを考えながら、風呂から上がった。 私が着替えのためにリビングに向かうと、先に体を拭いてやったれいむとまりさがソファの上でゆっくりしていた。 なんとなく枕にしたら気持ちよさそうだな、と思った時にはすでに2匹を枕にしていた。 そして、ちょっと昼寝のつもりが6時まで寝てしまった。れいむとまりさには「おもくてあんこがもれそうだったよ、ぷんぷん!」と怒られた。 それなら起こして言ってくれればよかったのに、と反論したら「おねーさんがぜんぜんおきなかったんだよ!」と更に怒られた。 でも、晩飯を一緒に食べようと提案したらあっさり許してくれた。流石は餡子脳だ、可愛いなぁ。 そんなわけで現在午後7時13分。テーブルの上にはしょうが焼きと味噌汁とほうれん草のおひたしと梅干の乗ったご飯、それかられいむとまりさのために作ったおにぎりが置かれていた。 私が手を合わせて「いただきます」と言うと、れいむ達もそれに倣う。 「「いただきま~す!」」 ちなみに、れいむ達のご飯は握りこぶし大のおにぎりが5つ。 右から焼きスルメおにぎり、塩辛おにぎり、たこわさおにぎり、カカオ99%チョコおにぎり、そしてジョロキアおにぎり。 具になりそうなものが無かったので、見ての通り、さっき酒のつまみに買ってきたものを入れてみたのだが・・・ 「む~しゃむ~しゃ、しあわせ~!」 「うっめ、これめっちゃうめぇ!」 焼きスルメは好評。若干辛みがあるとは言え、子どもで平気で食べられるものだからさすがに大丈夫だったようだ。 「ゆ!かたい!かたいよ!」 「かみきれないよー!」 と、思ったんだが・・・どうやらゆっくりの歯ではスルメを噛み切れないらしい。 どれだけ貧弱なんだお前ら。 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~!」 「うっめ、これめっちゃうめぇ!」 次の塩辛おにぎりとたこわさおにぎりは意外に好評だった。 どうやら、ご飯がいい具合に辛さなどのゆっくりが苦手とする味に対する緩衝材になったらしい。 けれど、おいしそうにおにぎりを食べる二匹を見たとき、正直ちょっとだけつまらないなぁと思ってしまった。 虐待趣味は無いつもりだったんだけどなぁ・・・。 「れいむ、にんげんのごはんはおいしいね!」 「そうだね、まりさ!つぎのおにぎりもきっとおいしいよ!」 次のおにぎりはカカオ99%チョコレートおにぎり。人間だったらこの組み合わせを見ただけでしかめっ面をしそうな代物だ。 「むーしゃむーしゃ、しあわ・・・ゆぎゅううううううう!!」 「うっめ、これめっちゃうげえええええええええええええ!!」 やっぱり、このチョコレートの苦みはゆっくりにとっては毒にも等しいものらしい。 ご飯のおかげでさっきのようにエレエレすることはなかったが、テーブルの上を苦しそうに転げまわっている。 「おーい、大丈夫か~?」 「ゆべっ!だいじょうぶじゃないよ!どうしてにがいのいれるの!」 「ひどいんだぜ、おねーさん!まりさたちおこるぜ、ぷんぷん!」 もう何度目になるかもわからない怒りのアピール。このぷくぅと頬を膨らませる姿が可愛くて仕方ない。 「あはは、余ってたもんだから勿体無いと思って、ついね・・・ごめんな」 顔の高さで手を合わせて少し頭を下げるようなしぐさを交えつつ、素直に謝るとれいむ達はあっさりと許してくれた。 「ゆぅ・・・はんせいしてるならいいよ!」 「れいむ、さいごのいっこもたべちゃうんだぜ!」 「ゆ、そうだね!むーしゃむーしゃしあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 「うっめ、これめっちゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 何だその絶叫?と突っ込んでやりたいところだが、この後エレエレするのは火を見るより明らかなので、その前に二匹の頭を掴んで、互いを正面から密着させる。 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ・・・ エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ・・・ 本日何度目になるかも覚えていないエレエレタイム。しかし、今回は2匹の口がぴったりとくっついているので、それが周りのものを汚すことはなかった。 「・・・エレエレエレエレ・・・むーしゃむーしゃ、しあわせ~!」 「・・・エレエレエレエレ・・・うっめ、これめっちゃうめぇ!」 「エレエレしたものを、食うなっ!!」 気がついたときには電光石火の突っ込みでこピンを放っていた。 ゆっくりで遊ぶのに夢中になっていて、気がつけば日付が変わっていた。 そのことに気づいた私は思わず顔をしかめる。 「うわぁ・・・もうこんな時間か。さっさと寝よ」 明日は1限目から授業があり、それに夕方からはバイトもある。 だから今日は早めに寝て明日に備えるつもりだったのだが・・・新しいおもちゃの魔力は想像を絶するものだったのだ! 帰宅した時点ですでにお気に入りのピンクのストライプ柄のパジャマに着替えていた私は電気を消して、もそもそと布団にもぐりこむ。 が、私の枕元でれいむたちが泣きじゃくるので簡単に寝付けなかった。 「ゆううううう!くらいよおおお!こわいよおおお!!」 「おねーざん、あがるぐぢでえええええええええ!おばげがででぐるよー!!」 こいつらがやたらと怯えているのには理由がある。 その理由というのは8時ごろから観始めた『ゆ霊の盆踊り』という映画だ。 登場人物が全員ゆっくりで、その斬新過ぎる試みと、どうしようもない演技と、ホラーとは無縁のふざけた笑顔などさまざまな要素があいまって映画史に名を残した伝説の作品だ。 もちろん、映画関係者どころか、映画に関する知識なんてろくに持ち合わせていない一般人からも非難轟々。 そんなわけで、本来ならば映画館で上映されることすらありえなかったのだが、この作品には有名な美人女社長率いるゆっくりカンパニーという強力な後ろ盾があったため、無事上映にこぎつけたという。 聞くところによれば、この映画は「ペットのゆっくりと一緒に鑑賞できる」&「(良くしつけられた)ゆっくりの館内限定貸し出し」というサービスを行っていたらしい。 そして、私はその目的も効果も存分に味わう羽目になった。 「おばけさんこわいよおおおおおおお!!」 「あ、ありすこわいいいいいいいい!」 「で、でいぶがあああああああああ!!」 「おねーざんー、ごわいいいいいいい!!」 「「ごれじゃゆっぐぢでぎないよ!!」」 などなど、終始こんな調子で泣き叫びながら、私にすがり付いてくる。 そりゃ、この作品が上映される前のゆっくりの知名度が低かったころなら、この姿にだまされて飼いたくなる人もいただろうな。 以上が今までにも毎日のように接してきた宵闇をこの2匹が恐れる理由だ。要するにお化けが怖いらしい。 どうせ、ほっときゃそのうち寝るだろ。 そう判断した私は心頭滅却して2匹の泣き声を風の音か何かと思い込んで、とっとと寝ることにした。 「はいはい、おやすみ」 「「おねえざあああああああああああああああああああああああああん!ねぢゃいやあああああああああああ!!」」 そんな感じで、翌朝・・・ 「「「「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」」」」 「・・・なに、このちょーてんかい?」 朝の日差しにたたき起こされた私の寝ぼけ眼に映ったのは産まれたてと思しきゆっくりの赤ん坊。 その数れいむ種3匹、まりさ種3匹の6匹。 「おねーさん!れいむのあかちゃんかわいいでしょ!」 「すごくゆっくりしたこだよ!これでおねーさんもゆっくりできるね!」 すまん、私にも・・・というか私でもわかるように説明してくれ。 「ゆゆっ!れいむたちね、よるすごくこわかったんだよ!」 ああ、怖がってるの無視して電気消して寝たからなぁ・・・・・・で? 「だからね、れいむとはなしてたらわかったんだぜ!おねーさんはゆっくりしたいからむしするんだって!」 まあ、睡眠ってのは人間の三大欲求なわけで、確かにその欲求を満たしたかったから無視して寝るという選択をゆっくり的に解釈すればそうなるだろう。 「それでね、おねーさんはゆっくりできればれいむたちをむししないんだよ!」 ・・・なぜ決定事項なんだ? 「だからまりさたちのゆっくりしたあかちゃんをみせてあげることにしたんだぜ!」 つまり、そういう事らしい。 ・・・・・・どういうことだよ。 「あぁ、やっぱりゆっくりの考えることはわからんわ・・・」 私はこのおちびもを捨てた場合の処理代やら、飼う場合の餌代やらを計算しながら頭を抱えることしかできなかった。 ---あとがき?--- たまにはぬるいじめでも、と思って書いてみた結果がこれだよ! どうでもいいことだけど、作中のおねーさんはドスなおっぱいの持ち主です。 byゆっくりボールマン 続き このSSに感想を付ける
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色色ゆっくり 19KB 虐待-普通 ギャグ 小ネタ ※小ネタ詰め合わせです 「実演販売」 あーやっちゃった! 「なにするんだぜぇぇ!まりささまのきれいなおはだに、いろがついちゃったのぜぇぇぇ!」 飼いゆっくりの皮に醤油のシミ…ありますよね?こんな事。 そこでこれですよ奥さん!「ゆっくりクリーナー」の出番です。 ご覧ください、普通のたわしやスポンジじゃ中々落ちないですよね、この汚れ? 「ゆぎゃぁぁぁぁ!いだい!やめろぉぉぉ!ごしごしさんいやぁぁぁぁ!」 ところがですね、この「ゆっくりクリーナ」でさっと一拭きすればあら不思議! 汚れたゆっくりがこの通り綺麗になります。 「いだいぃぃ………ゆゆっ?!まりささまのおはだがきれいになったのぜぇぇ!!」 ゆっくりもこれにはびっくりです!シャレじゃありませんよ。さあ、奥さんもっと良く見てくださいよ どうです?綺麗なもんでしょ? 「ゆふふん!まりささまのびはだに、みとれているのぜ!もっとよくみていいのぜ!!」 さあ、どんどんやってみましょう! まずはケチャップ、カーペットにこぼしても大変なのに、ゆっくりに掛かったら一大事です。 「ゆべぶっ!なんなのぜぇぇ!まりささまのかみのけがよごれちゃったのぜぇぇ!!」 これではまるで血まみれの生首です、ゆっくり殺人事件ですよ奥さん! でも、ご覧ください「ゆっくりクリーナ」で一拭きすればこの通り!ケチャップも敵ではありません。 「ゆゆ~ん♪きれいになったのぜ~♪びまりさなのぜ~♪」 あら?そこの奥さん、まだ信用してないんですか?じゃあ、もっとすごいの行きますよ~ あぁっと、油こぼしちゃった!見てくださいゆっくりが油まみれです、酷いですねこれは。 ここまで油でべったりだと、このゆっくりは揚げ饅頭にでもするしかありません! 「ゆぴゃ!ゆわぁぁぁぁん!これはなんなのぜぇぇ!べとべときもぢわるぃぃぃ!」 でも、この「ゆっくりクリーナ」はすごいですよ!油も簡単に拭き取ってしまいます。 「ゆぺぺぺっ!さっぱりしたのぜ!ゆふ~ん♪まりささまはすごいのぜ~♪」 ゆっくりもこれには大満足ですね! あら?奥さん?気に入らないんですか?ならもっとすごいをお見せしましょう あっと!ペンキをこぼしちゃった!…これは酷いですね…真っ青なゆっくりの出来上がりです。 こうなったらこのゆっくりはもう、ゴミに出すしかないですよね? 「ゆぎゃぁぁぁ!めになにかはいったのぜぇぇ!いだいぃぃ!ぬるぬるきもちがわるいのぜぇぇ!!」 処がこの「ゆっくりクリーナ」ならこんなペンキでもあら見事!すごいですねこれは! 「いだぃぃぃ!おめめをこすらないでぇぇぇぇ!!ゆべべべべっ!ゆぎぎぎぎっ! …ゆひっ…ゆぎっ…ぬるぬるさん…とれたのぜ?……」 どうです、納得して頂けました?帽子や髪についていたペンキもバッチリ取れました。 秘密はこの○○にあるんですねー あら、そこの奥さん今来ました?もう一回はじめからやりますよ、見ててくださいねー あー墨汁こぼしちゃった!……… 「ゆひっ…ゆひっ…もう…いやなのぜぇ!……………ゆぼべべべべっ!!」 完 「小さな親切」 「ゆっ!くそにんげん!れいむはおなかがすいたよ!なにかたべさせてね! あと、れいむはさむくてしにそうだよ!かわいそうなんだよ!だかられいむをかいゆっくりにしてね!」 「あら?なにかしら?…これはゆっくり?…」 まだ冬も始まったばかりの頃、れいむは捨てられた。 原因は態度が悪くなってきたから、要するにゲス化したからである。 個体の質と飼い主の躾の問題もあり、程なくして手がつけられなくなった。 れいむは飼い主に公園に捨てられてから、ろくな物を食べていなかった。 幸いほかに野良ゆっくりがいなかった事もあり、 同族から危害を加えられることが無かったが、それでも飢えと寒さに耐える生活を強いられていた。 そしてようやくれいむにも幸運がめぐってきた。久しぶりに見かけた目の前の人間である。 彼女はゆっくりに対しての知識も乏しく、野良ゆっくりを見るのも初めてだった。 そして何より幸運な事は… 「えっと…彼方は寒くてお腹がすいているのね?」 「さっきからそういってるでしょ?ばかなの?しぬの?」 「あの…その…ごめんなさいね」 彼女はお人よしだったのである。 通常ゆっくりがこんな態度で人間に接すれば、駆除されても文句は言えない。 これが鬼威参なら即お持ち帰りされて苦痛を味わう事になったであろう。 しかしれいむは運が良かったのだ。彼女は目の前のゆっくりを可哀想だと思ってしまったのだ。 「えっと…私は今食べ物を持ってないのよ…ごめんなさいね」 「つかえないくそにんげんだね!まえにれいむがかっていた、どれいのほうがまだましだよ!」 「はぅ…ごめんなさい…………でも、そのかわりね…これがあるの、 これがあれば寒い思いはしなくていいと思うわ」 「ゆん!しかたないね!それでがまんしてあげるから、さっさとちょうだいね!」 「今貼ってあげるからじっとしててね…」 そう言うと彼女は鞄からそれを取り出す。当然れいむはそれが何か解らない。 彼女はれいむの両頬に当たる場所にそれをそっと貼り付けた。 「ゆ!なんだか気持ちが悪いよ!それにぜんぜんあたたかくならないよ!はやくこれをとってね!!」 「…もう少ししたら暖かくなるからそれまで我慢してね……私にはこれ位しかしてあげられないわ… ごめんなさいね……………もう行くね」 「まったくつかえないどれいだね!しかたないね!さっさとれいむをおうちまであんないしてね! れいむがおまえのごしゅじんさまになってあげるよ!!………ゆん?どこにいったの?つかえないやつだね! ……ゆゆっ!なんだかあたたかくなってきたよ!ぽーか、ぽーかしあわせ~♪」 もうすでに彼女は去ってしまったのだが、そんな事にも気が付かず好き放題言い放つれいむ。 いつの間にか奴隷にされてしまっている始末である。 だが、そんなれいむにも災難が降りかかる事になる。彼女の親切が仇となったのだ。 彼女がれいむに張った物それは、貼り付けタイプの使い捨てカイロだったのだ。 「ゆふふ~ん♪あったかいよ!これがあればふゆさんも、れいむのてきじゃないよ! さすがれいむだね!!つよすぎてごめんね!」 どこまでも調子に乗るれいむ、これが餡子脳という物なのだろうか?なぜか自分の強さに酔いしれていた。 だが、天はやはり奢り高ぶる愚か者に鉄槌を下すのか、少しずつ変化が現れ始めていた。 「ゆゆ~ん♪しあわせ~♪あったかすぎてなつさんがきたようだよ!…なんだかあったかすぎだよ? どうなってるの?これじゃあついよ!もうあつくしなくていいよ!…あづいぃぃぃ!!これどっでぇぇぇ!!」 このタイプのカイロは人間でも直接肌に張ったりはしない。低温火傷の危険性があるからだ。 これをれいむに貼り付けた彼女もその位は知っていたのだが、 彼女はゆっくりの事をよく知らないために、皮に直接貼り付けてしまったのだ。 余りの熱さにのた打ち回るれいむだったが、その程度でカイロが取れることは無かった。 揉み上げを使えば取る事も出来たかもしれないが、熱さでそこまで思考が働かなかったのである。 「あづいのいやぁぁぁぁぁ!おうちかえるぅぅぅ!!ゆぎゃぁぁ!………み…みずさんがあるよ!…みずさんにとびこむよ!」 れいむは公園の小さな池に目掛けて飛び込んだ。当然水は危険な物だと理解はしていたが、それ以上に熱かったのだ。 池の水は思った以上に冷たく、すぐに熱さを和らげてくれた。しかし今度はその冷たすぎる水がれいむを襲った。 池は小さいと言ってもれいむでは這い上がれないほどの深さがあったのだ。その上水が濁っている為視界も悪い。 「ぼごごごぐぼっ!づめだいぃぃぃぃ!おみずざんがらでられないよぉぉぉぉ!!」 どうやって喋っているのかは知らないが、れいむは水中で必死にもがいていた。 だがそれも逆効果でしかない、もがけばもがくほど皮は水を吸ってふやけていった。 「ゆぼごぼぼっ!おみずざん!でいぶをゆっぐりざぜろぉ!ぼぼゆごぼど!」 こうしてれいむはゆっくりさせてくれない水に呪いの言葉を吐いて、池の栄養分となっていった。 彼女の親切がれいむには仇となってしまったが、まあ仕方ないだろう。 めでたしめでたし 「とっさの対応」 「いたいんだぜぇぇ!なにするのぜぇぇ!このてんいんさんがまりさをいじめるのぜぇぇ!!」 コンビニでバイトしていたら、野良ゆっくりがやって来た。丁重に追い出そうとしたら、突然騒ぎ出した。 僕は自分でも気の弱い方なので、普段なら野良ゆっくりなんかに触った事もない。 先輩も今は休憩に入っているので、僕一人で対応しなくちゃならなかったんだけど… 「このみせはさいあくなのぜぇ!てんいんさんがまりさをいじめるのぜぇ!」 この帽子をかぶったゆっくりがこんな風に叫ぶのだ。困った事に店には他に客も居る。 僕はとりあえず叫び声を上げられない様にゆっくりに気を使う。 「…えーっと、僕は君に危害を加えるつもりはないよ…大人しくしてくれないかな?」 にやりっ!「…そんなことしんじられないのぜぇぇ!てんいんさんはまりさをいじめるのぜぇぇ!!」 ん?今一瞬ニヤッとしなかったかな?困った、先輩はまだ来てくれないかな? このまま強引に店から出したらさらに騒ぎそうだし、ゴミ箱に捨てたら中で叫んでそうだし… なんとか大人しくして貰うしか方法がなさそうだな… そう考えた僕は出来るだけ穏便に対応することにした。 「僕は何もしませんよ、ただ君に外に出て行って貰いたいだけなんですよ」 「まりささまはおきゃくさまなのぜ?そういうたいどはよくないんだぜ?ことばづかいもわるいんだぜ!」 そう言われると流石にイライラするが、ここで騒がれる物面倒なのでおとなしく従うことにする。 「失礼しましたお客様、今日はどのようなご用件でしょうか?」 「さいしょからそういうたいどで、いればいいのぜ!まりささまはあまあまをしょもうするのぜ!!」 あまあま?なんだろう?そんな商品は置いてないし… そんな事を考えていると、ゆっくりがお菓子コーナーの方に向かっていった。 僕も慌てて後を追いかける、幸い他の客は雑誌コーナーで立ち読みしていた。 ゆっくりはチョコレートなどが置いてある場所で止まると、こっちを見て来た。 「なにしてるのぜ!きのきかないてんいんなのぜ!はやくそれをとるのぜ!まりささまじゃとどかないのぜ!」 「これですか?」「ちがうのぜ!」「これでしょうか?」「それじゃないのぜ!」「じゃあこれです?」「ちがうのぜ!」 『このてんいんはぜんぜんつかえないのぜぇぇぇ!やくたたずなのぜぇぇ!』 流石にムカッとしたが、何とか我慢する。 何度目かのそんなやり取りをしている内に、僕は誤って棚のお菓子を崩してしまう。 崩れた箱入りのお菓子はゆっくり目掛けて降り注いでいった。 「ゆがべべっ!いだいんだぜぇぇぇ!!なにするんだぜぇぇぇ!!」 ゆっくりもこれには驚いたのか、崩れたお菓子に埋もれて騒ぎ出す。 僕は慌ててゆっくり発掘作業に取り掛かる。 やっとゆっくりをお菓子の中から救出すると、ゆっくりが一瞬ニヤッ!とまた笑った。 「いだいぃぃ!しにそうなんだぜぇぇ!てんいんさんにころされるのぜぇぇぇ!!このままじゃまりさしんじゃうのぜぇぇ!」 いきなり叫ばれてどうしようか迷ってしまった僕は、かなり焦っていたのか訳の解らない事を言ってしまった。 「お客様!何処が痛いんですか?骨折しましたか?心臓が止まりそうですか?」 「いだいのぜぇ!こっせつしたのぜぇぇ!しんぞうがとまりそうなのぜぇ!(棒読み)」 良く考えてみれば饅頭が骨折や心停止だなんて、可笑しな話ではあるがゆっくりも乗ってきたので慌ててしまった。 そして緊急時のマニュアルを思い出し備え付けてあったAED(※自動体外式除細動器)を用意する。 起動したAEDの音声ガイドに従い電極パットをゆっくりにつけた。 「なんなのぜ?このへんなのをはがすのぜ!!」 『心肺停止しています…直ちに電気ショックを行います』 「ゆゆっ?」 ドゴンッ!「ゆびゃぁいぃぃ?!」 衝撃音とともにゆっくりが飛び上がり悲鳴を上げた。そこには先ほどまでの憎たらしい顔は無く、 両目を見開いて涙を流し、だらしなく口を開いて舌を出した無様な姿のゆっくりが悶えていた。 「ゆ…がご…ぎ…ぎ……げ…げ…ぐ…」 『心肺、活動がみられません…もう一度電気ショックを行います』 ドゴンッ!「ゆっごおぉぉぉ?!………ゆ…が…が……が…」 ドゴンッ!「ゆっぼうぅぅ?!………ゆ…ぎ……ぎ……ぎ…」 ドゴンッ!「ゆばんっ?!…………げ……げ…げ…」 そんなやり取りをしていた所に先輩がやって来た。 「君はアホか?そんな事しても意味ないよ、ゆっくりに心臓なんかあるわけないだろ?」 「え…?」 そこで一気に冷静になった僕がゆっくりを見ると、汚い顔で死んでいた。 騒ぎに気がついた客も集まっていた、何人かが感心したような顔をしていたのが印象的だった。 「あーあ、しーしーやらうんうんやらで汚れてしまったな…君が片付けておくんだぞ? …まあ、面白い物がみられたよ…笑わせてもらった」 そう言うと先輩はまた店の奥に行ってしまった。どうやら一部始終を見られていたようだ。 僕は仕方なく店の掃除とゆっくりの後始末をする事になった。 それからしばらくして、ゆっくりに対してAEDを使った人が何人か報道されていた。 僕のような人間が他にも居たのかと思うと、ちょっと笑えてきた。 程なくしてAEDの注意書きに「ゆっくりには使用しないでください」と追加されたそうだ。 完 ※AEDは心室細動の際に機器が自動的に解析を行い、 必要に応じて電気的なショック(除細動)を与え、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器です。 駅や自販機なんかにあったりしますね。コンビニにあるかは知りませんが… 私も1度しか使ったことがないので、色々いい加減な部分があるかもしれませんがご了承ください。 「冬といえば…」 すっかり雪に覆われてしまった山、一面白の世界。 ゆっくりの巣も当然雪の下の隠れてしまっている。 「むーしゃ、むーしゃ、しっしっしあわせー!どんぐりさんはゆっくりできるのじぇー!」 「ゆふふ、ゆっくりたべてね。とかいはなまりさのおかげで、たべものにこまらないわ」 「おちょーさんありがちょー、ゆっくりできるわ」 「ゆふふ、てれるのぜ!おうちさんだって、ありすのこーでぃねいとしてくれたけっかいさんにまもられて、 ゆきさんもはいってこれないのぜ!おかげでふゆさんもこわくないのぜ!」 「ふゆさんなんかまりちゃのてきじゃないのじぇー!ゆっくりー!」 「ゆふふ、まりさったらてれるわ、おとびちゃんたちも、とかいはにえっとうしましょうね」 「「ゆっきゅりしゅりゅよー」」 この一家は比較的優秀な番の様で、冬を上手くやり過ごしていた。 子供達も聞き分けが良く貯蓄された食料を食い潰す様な事もないだろう。 幸せそうな家族だが… ザクッ!ザクッ! 「「「「ゆゆゆ?…」」」」 パキッ!ペキッ!カラカラカラカラ………ヒュゥゥゥゥ!! 「ゆびゃぁーん!しゃむいのじぇー!ゆきさんゆっくちしちぇぇぇ!」 「ゆーん?!いったいなんなのぜ?」 突然「とかいはなけっかい」が崩れうろたえる一家、外から吹き込む風雪に身を振るわせる。 「おちびちゃんたち、おうちのおくのほうにかくれるのぜ!」 「ありすがけっかいさんをもとにもどすまで、おちびちゃんたちはゆっくりがまんしてね!」 「ゆんやぁぁぁ!はやくけっかいさんをなおすのじぇー!ゆっくちできにゃいぃぃ!」 「がまんしちぇね!おねぇしゃんのうしろにかくれちぇね!」 「ゆびゃぁぁぁぁ!ふゆさんはいじわるするんじゃないのじぇぇぇぇぇ!!」 親ありすが結界を張り直そうと巣穴から出る。 外は一面の雪景色、思わず身を振るわせるが崩れた結界の残骸を集め始める。 するとある事に気が付いた、それは白い色をしていた為に始めは気が付かなかった。 ありすは上を見上げて驚き、思わず声を上げる。 「に、にんげんさんよぉぉぉ!」 そこには白い防寒服に身を包んだ男がスコップを片手に佇んでいたのだった。 「ありす、いったいなにがあったのぜ?!」 ありすの叫び声に慌てて親まりさも巣から飛び出してくる。 だが、男の姿を見ると恐怖で固まってしまった。 この番は人間の恐ろしさを良く理解していたため、突然の事態に動けないでいたのだ。 「こんにちはーゆっくりども!ゆっくり越冬出来ているかぁぁぁ?!」 「に、にんげんさん、まりさたちはなにもわるいことはしてないのぜ!ゆっくりみのがしてね!」 「ゆわわ、にんげんしゃんだわ!あやまりますきゃらありしゅたちをゆるしちぇくだしゃい」 「にんげんしゃんがけっかいしゃんをこわしちゃのじぇ?さっさちょないしちぇあやまっちぇね!」 「だめよおとびちゃん!にんげんさんにあやまって!ごめんなさいにんげんさん、おちびちゃんをゆるしてね」 「なんでにんげんしゃんに、あやまらなきゃいけないのじぇ?!まいちゃがせいしゃいしてあげるのじぇ!」 親ゆっくり達は何事かも解らず、男に謝罪するが子まりさだけは反抗的な態度を取る。 子ありすは対照的に恐怖に震えるのみだった。 そんな様子をじっと男が見守っていたが… 「お前達!今年は冬季オリンピックだぁぁぁ!一緒に祝え!一緒によろこべぇぇぇ!!」 そう叫ぶと男は巣穴にスコップを突き刺し掘り進めた。 どんどん削られていく巣を一家は呆然と見守る。 半分くらい壊されたところで、貯めてあった食料が姿を見せる。 男はそれを手で掴むと、子ありすの口に詰め込み始めた。 「今日はお祝いだぁぁぁ!沢山食べていいぞぉぉぉ!!」 「ゆべぶぼっ!やめちぇぇ!たべちゃくないよぉぉ!くるじいぃぃ!!」 「ゆわーん!にんげんさん、やめてほしいのぜ!おちびちゃんがくるしがっているのぜ!」 「にんげんさんごめんなさい!おちびちゃんはみのがしてあげてください!」 「ゆんやぁぁぁぁ!こわいのじぇぇぇぇ!」 子ありすは泣きながら必死に身をよじるが、男はお構い無しに口に食料を詰め込んでいく。 親達は許しを請うだけで、男に攻撃を加えない。この行動からも優良さが伺える。 子まりさは恐怖でしーしーを漏らしてしまっている。 子ありすは無理やり食べさせられている性でどんどん膨らんでいく。 食料の山が半分以下になった頃限界が来たのか、勢いよくうんうんを放出するとそれきり動かなくなった。 「そうか、死ぬほど嬉しかったのか?!オリンピックばんざぁぁぁい!!」 「「ゆわぁぁぁ!おちびちゃぁぁぁん!!」」 「ゆびゃぁぁぁん!ごめんなしゃいぃぃぃ!まりちゃだけでもたしゅけちぇぇぇぇ!!」 子ありすの死に泣き叫ぶ親達、子まりさは恐怖で命乞いを始めた。 「よし!お前達は俺と一緒に来てもらうぞ!喜べ!ともに祝え!!」 こうして一家は袋に詰められ男に連れ去られた。 後には苦悶の表情で息絶えた子ありすと無残に壊された巣が残されていた。 「今大会より種目に加えらた新競技だぁぁぁぁ!覚悟はいいかありす?お前が記念すべき第一匹目だぁぁ!!」 「やめてぇぇぇ!はなしてぇぇぇ!とかいはじゃないわぁぁぁ!」 「やめてほしいのぜ!まりさがありすのかわりになるのぜ!」 「ゆわぁぁぁん!おとーしゃん、まりしゃをたすけちぇぇぇぇ!!」 連れて来られた場所はスキーのジャンプ台だった。 ありすは男に抱えられ必死でもがいていた。 まりさ親子は袋から出されて、事の次第を見守るしかなかった。 「いくぞありす!新種目『ゆっくりラージヒルありすの部』だぁぁぁ!お空を飛んでこいぃぃぃ!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!……おそらを…とんで……」 「ゆわぁぁぁぁ!あでぃずぅぅぅぅぅ!!」 「もうやじゃぁぁ!おうちかえりゅぅぅぅぅ!!」 ありすは放り投げられると勢い良く坂を転がり華麗に宙を待った。 意外と高く飛び上がったが、やはり重力には逆らえず落下を始めるありす。 「いけえぇぇぇ!K点越えだぁぁぁぁ!!!」 ………グチャ!「どがいばっ!!」 「ゆ…あ…あ…あ…」 「はやくまりちゃをたしゅけろ!このくじゅおやぁぁぁぁ!!」 「はっはっはっ!初挑戦にしては上出来だぁぁぁ!ぶらぼーありす!!」 ありすは雪の上にカスタードの花を咲かせ死んでいった。 「あーお前、ここに居たのか……勝手にこんなとこまで入って…」 「あ!コーチじゃないですか!どうしたんですか?」 「どうしたってな…お前が急に居なくなるし………またこんな事してたのか…… でな、お前な、各方面から…特に『ゆっくりんピース』と『ゆーシェパード』から講義があってな… お前が公の場でゆ虐やゆ苛めばかりしてるのが叩かれたんだ… そう言う訳でお前は、入村式とオリンピック開会式に参加を自粛して貰う」 「どおぉぉっしてですかぁぁぁぁぁ?!!」 「さあ、最後の聖火ランナーがやってまいりました。まりちゃの叫びも美しいです…」 「ゆびゃぁぁぁん!あちゅいぃぃぃ!まりちゃのおぼうしがもえちゃうよぉぉぉ!!」 「おちびちゃぁぁぁん!ゆっくり、ゆっくりしてねぇぇぇぇ!!」 先ほどの男が走っている。その手には子まりさのあにゃるに棒をた物が握られていた。 子まりさは帽子をボンドで固定され脱げないで居た。 その帽子には火が灯してあり、熱さと帽子が燃えていく恐怖に身をよじっていた。 男が向かっている先には、段ボール箱の上に固定された親まりさが居た。 「さあ、いよいよ点火です!感動の瞬間です!!」 男は親まりさの帽子に火をつけた。火はすぐに燃え広がっていく。 即席聖火台ではあったが炎が美しく燃え上がる。 「ゆわぁぁぁぁ!まりさのおぼうしがぁぁぁぁぁ!!」 「あちゅいんだじぇぇぇぇ!だれかまりちゃをたしゅけろぉぉぉぉ!ゆっくりできにゃぁぁぁい!!」 「オリンピック開会ばんざぁぁぁぁい!!」 感動の光景に男は泣いていた、まりさ親子も泣いていた。 炎がまりさ親子をコゲ饅頭に変えた頃、一人ぼっちの開会式は終わりを告げた。 完 「実演販売」これは実演販売という名のゆ虐ですね。 「とっさの対応」某ドーナツ店のお話とかぶっているかもしれませんね…結構いい加減に書いてあるかもしれません。 「冬といえば…」某オリンピック選手とは関係ないと思います。 全体的にまりさ多目ですね…別にまりさが嫌いなわけでもないですよ。 徒然あき(ムシゴロウあき) 過去に書いたもの ムシシリーズ ふたば系ゆっくりいじめ 819 ムシゴロウ王国 ふたば系ゆっくりいじめ 826 ムシゴロウ王国2 ふたば系ゆっくりいじめ 828 ムシゴロウ王国3 ふたば系ゆっくりいじめ 831 ムシゴロウ王国~王国の仲間達~ ふたば系ゆっくりいじめ 856 ムシゴロウ王国5 ふたば系ゆっくりいじめ 879 ムシゴロウ王国6 小ネタ ふたば系ゆっくりいじめ 835 罰ゲーム ふたば系ゆっくりいじめ 836 ショート ふたば系ゆっくりいじめ 841 ゆんセルク ふたば系ゆっくりいじめ 842 ハイテンション ふたば系ゆっくりいじめ 848 思いを伝えよう ふたば系ゆっくりいじめ 849 ゆんケストラ ふたば系ゆっくりいじめ 850 即興 ふたば系ゆっくりいじめ 869 とかいはにリフォーム ふたば系ゆっくりいじめ 888 一週間 ふたば系ゆっくりいじめ 896 モチモチぷにぷに ふたば系ゆっくりいじめ 897 酔っ払い ふたば系ゆっくりいじめ 917 愛でお兄さんの悩み ふたば系ゆっくりいじめ 918 ゆっくり健康法 愛で ふたば系ゆっくりいじめ 863 めーリンガル ふたば系ゆっくりいじめ 902 私はめーりんである。 短編 ふたば系ゆっくりいじめ 861 ゆっくり草 ふたば系ゆっくりいじめ 876 ゆっくり草子 ふたば系ゆっくりいじめ 912 ずばり、詰め合わせ 徒然あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓↓↓↓金を貰うことで責任が発生するからみんな真面目にやるんだよ馬鹿なのかよ死ねよ -- 2016-02-18 21 21 43 金儲けがくだらんというなら一生ボランティアでもしてろよ。 -- 2011-01-13 23 06 45 ゆっくりにAEDに最高に吹いたw いやぁ、一度セットしたら延々と続く電気ショックとかマジぱねぇww -- 2010-11-26 23 12 56 ↓じゃあ話せよ -- 2010-09-05 23 38 33 くだらん金儲けの、、、どうでもいいけど作品の事を話しません? -- 2010-08-19 03 24 42 オリンピックぐらいとか言わないでもらえるかな。あなたと違ってすごく楽しみにしてる人もいっぱいいるんだよ。 -- 2010-08-07 21 54 26 オリンピックぐらいでテンション上げすぎ。うざい。 -- 2010-07-15 04 48 23
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「ふたば系ゆっくりいじめ 702 ゆっくりマン/コメントログ」 素敵な初夢だねまりさ。 こういうマスコット的なゆっくりは可愛くて良いな。 -- 2010-08-25 18 32 08 口は災いの元w まりさちゃん、一つかちこくなったねww -- 2010-10-26 22 43 00
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ゆっくり夫婦の出産 永遠亭のほど近く、竹林の奥にそのゆっくり夫婦は住んでいた。 ゆっくりまりさと、ゆっくりれいむ。 二匹でどれだけの時を過ごしてきたのだろう。 その膨れ上がったその体は大人が両手を広げたよりもなお広い。 重量だけでも一般的なゆっくり三十匹分を優に超すのではないだろうか。 そんなゆっくりれいむとゆっくりまりさが巨体を横たえるのは、竹林の藪に隠されたとある洞。 かろうじて入れるだけのスペースに二匹みっちりと入り込んで、ひたすらにゆっくりと動かないでいた。 あまりにもゆっくりしすぎたのだろう。巣穴の外側に向けた皮にコケが付着して、二匹の住処は竹林に完全に沈み込んで見えた。二匹はなるべく動かない方がゆっくりできることも知っていた。長年、生き抜いてこれた要因のは、偶然とそれを生かすわずかな知恵。 そんな完璧に擬態する二匹を、その日因幡てゐが発見できたのは、竹林のことを知り尽くしていることよりも、天性の幸運とひたすら暇だった境遇ゆえだろう。 鈴仙と永琳が研究にこもって三日目、統率するものもいない永遠亭でてゐは暇をもてあまし、竹林を一匹で歩いていたところだった。 「でけー」 あきれたようなてゐの嘆息。 巣穴の出入り口をふさぐ巨体に、古い妖怪であるてゐですらあっけにとられていた。 巣穴からかすかにはみだした赤いリボンは、おそらくれいむ種のものだろう。体躯のでかさに合わせて腹巻サイズのリボン。この鮮やかな朱が、てゐをゆっくりたちの存在に気づかせた。 てゐはその巨体を前にどうしたものか一端途方に暮れて、その紅リボンをひっぱってみる。 「ゆっ!? だれなの、やめてね!」 びりりと地面を揺らすようなゆっくりれいむのくぐもった声。 「ここはまりさとれいむのおうちだよ! 子供が生まれるから放っておいてね!」 同じくこもった声が続く。言葉の内容で、この二体が夫婦であることも判明した。 と、同時に悪戯っぽく緩むてゐの唇。 最初は軽くからかって暇つぶしをするつもりだった。でも、この二匹を使った悪戯を思いついてしまった。思いついたからには艱難辛苦を乗り越えてでもやらねばなるまい。それが悪戯兎なのだから。 「ごめんね、驚かしちゃった?」 完璧な猫なで声。言葉遣いも純真な少女の口調そのもの。鈴仙などはその声を聞いただけで、裏に流れる何かを感じて悶え苦しむだろう。 とはいえ、人間がその声に目じりが下がってしまうのと同様、ゆっくりたちの警戒を少しだけ解くことになる。 巣穴の表面がぞぞぞと回転して、お人よしそうな瞳が外に向いた。黒髪、ぺたんとして存在がわからない鼻、何かもの言いたげな口。パーツこそ巨大だが、まぎれもなくゆっくりれいむだった。 「ゆっ! 人間さんじゃなくて兎さんだ! ゆっくりしていってね!」 「兎さん!? れいむ、まりさが食べるから捕まえてね! 兎さんはゆっくりしていってね!」 「ゆぐーっ! ゆっくりおざないでええええ! 赤ちゃん、つぶれるううううう!」 食欲にかられた奥のまりさに押されているのか、きゅうきゅうに張り出したれいむの顔。 針で一突きすれば破裂しそうと思うてゐだったが、てゐのしたい悪戯はそんなことではない。にこにことした笑顔でゆっくりに話しかけていた。 「食べられないと思うよ。私は妖怪兎さんだからね」 「ゆっ! 妖怪さん!」 その言葉を皮切りに、れいむの膨張が止まる。 妖怪。人間ですら恐れるその存在を、長生きしていたこの二匹は存分に知っていた。 今度は逆に奥へ引っ込もうとするゆっくりれいむ。 「ま゛り゛さ゛! 奥へ行ってええええ、食べられちゃうううう!!!」 「やべでえええ、まりさの中のあがぢゃんがつぶれるよおおおおお!!!」 もう、てゐが立っているだけで赤ちゃんの命は風前の灯といえる状況だったが、それではもったいない。 てゐは悪意をまったく感じさせない柔和な笑顔を浮かべて見せる。 「大丈夫だよ、私はゆっくりを邪魔しないから」 いいながら、れいむの頭をそっとなでる。 「ゆ?」 そのくすぐったい感触に、れいむは逃げるのをやめて振り向いた。 「うさぎさん、ゆっくりさせてくれるの?」 まりさの声も続く。 「ゆっくりさせてくれるのなら、さっさとでていってね! 二度とこないでね!」 れいむを盾に、きっちりと要求。 その様子が面白くて、くすくすと笑みをこぼすてゐ。 てゐは、このゆっくりたちをゆっくりさせないことにした そのための言葉を、思いつくままに投げかける。 「でも、私が見つけたぐらいだから、すぐに他の妖怪がみつけちゃいそうだね」 二匹のぷるんぷるんという蠢動が、凍りついたかのように停止した。 地面を伝うゆっくりたちの忙しないささやき。 うさぎさんのいうとおりだよ。見つかっちゃうのはいやだよ。別のところにいかないと。でも、どこに。 こそこそと巣穴の中で話し合うれいむとまりさ。てゐのウサミミには丸聞こえだった。 「このおうちで、ゆっぐりじだがっだのにいいい……」 挨拶のころの元気よさはどこへやら。弱りきった口調でゆっくりれいむがつぶやく。 れいむが家族とはぐれてこの巣にたどり着いた頃、この巣はもっと狭くて、それなのに一人ぼっちで寒々としていた。 それがまりさと出会いを経て暖かなおうちになって、体が大きくなるのに従って巣を少しずつ広げていった。 そのおうちに、子供のためのスペースを作りはじめたのはいつ頃だろう。出産と子育てというゆっくりにとって一番危険な時期を無事のりきるため、二匹はずっと子供を安全に育てられるまで自らが大きくなるのを待っていた。 万全の準備で子づくりに挑んだ二匹。何年も待ち望み、求めてやまなかったわが子を熱望していた。 それから、まずはまりさが妊娠する。出産のための餡子は十分にお互い溜め込んでいたため、あとはゆっくりと待つばかり。 ただ、ゆっくりれいむも子供を妊娠したかった。わが子を生み出すという夢のために何年も準備していたのはれいむとて同じこと。 寂しげなれいむの様子に、ついついまりさも同情した。 そんな経緯で、二匹揃って妊娠したれいむとまりさ。このまま、何事もなければ、まりさだけが出産するよりも二倍の幸福が待っている。そのはずだった。 「二人ともお腹に赤ちゃんがいるから、あんまり動けないのおおおおおおおおお!」 まりさの悲嘆に続く、れいむのひぐひぐという鬱陶しい泣き声。 一方、てゐは新たな事実を前に瞳を輝かせていた。 二匹とも妊娠している? 好奇心がざわめくてゐの瞳。 一般に、ゆっくりたちはタチとネコに分かれて妊娠させる役と妊娠する役を分担する。出産準備中に子供の餡子となる分の餌を集めるタチ役、じっとして子供の生えた茎が成長するのを待つネコ役という具合に。 だが、体の中でゆっくりを育てて出産する大きなゆっくりは、元から莫大な餡子を抱えている。役をわける必要がない以上、この二匹はお互いを妊娠させあったのだろう。二匹とも身重になって状況の変化に対応できないという予測はまったく思いつかないままに。 その場の勢いに任せて、本当に馬鹿だ。 そんな感想を抱きながら、てゐはそっと目を伏せる。 「可哀想だね……」 ありもしない地雷によってゆっくりの安寧を奪った張本人の台詞とは思えない。心からの同情に満ちたその表情も、見事だった。 真に迫った演技に、ゆっくりたちはたやすくすがり付く。 「うさぎさん、お願い、ゆっくりできるところを教えてええ!!!」 「んー、あるかなあ。あ、そうだ!」 頭に電球が浮かんでもおかしくないようなそぶりで、手を鳴らす。 自分の体より小柄な兎の少女に、ゆっくり二匹は命運を握られて、必死のまなざしでてゐを見つめていた。 「ねえ、あなたたちさえ良ければ、ゆっくり子供を生める場所を紹介してあげようか」 「おっ……お゛ね゛か゛い゛し゛ま゛す゛ううう!」 頭を擦り付けるようなゆっくり二匹の礼に、今日もいいことしたと晴れやかな笑顔のてゐだった。 「ここが、あなたたちの部屋ね」 てゐに案内され、ゆっくり二匹が通されたのは永遠亭の一角。広くはないが、品のいい調度品で統一された和室だった。 「ゆっ! すごい、ゆっくりできるね!」 れいむがぴょんぴょんと部屋に飛び込んでいく。 その巨体で飛ぶものだから、着地のたびに畳と底板がみしみしと悲鳴をあげている。 それでも、てゐの笑顔にほころびはない。 続けて、れいむの後ろを追っていこうとしているのは、先ほどはずっと穴倉の奥にいたゆっくりまりさ。 だが、縁側から後一歩で和室の中というところで、立ち止まり恐る恐るてゐに向き直る。 「うさぎさん、ここは人間さんのおうちじゃないの?」 ゆっくりを長生きさせていたもの。それは、お互いの領域をわきまえる知性を育めたことだった。 てゐはその賢さに、正直ささやかな驚きを感じてしまうものの、表情は微塵も揺るがぬ一面の笑顔。 「大丈夫だよ。ここは私のうちで、持ち主の私がこの部屋をあなたたちの部屋だと決めたのだから」 その笑顔と言葉に、まりさはほっと一息。 「すごい! やわらかくて暖かいよ! はやくきて、まりさ!」 先行するれいむの声にたまらず、閑静な日本家屋に飛び込んでいく。 大きな振動と、土ぼこり。 穴倉の中にいたまりさの体が、たたみに大きな泥のかたまりをのせ、巨体でずりりとこすり付ける。 向かう先にはゆっくりれいむ。その巨躯で体当たりした結果、大穴の開いた襖。その半壊した奥は押し入れのようだ。 その押入れからは、雪崩のように布団の一段がすべり落ちている。れいむは土まみれの体をこすりつける。幸せそうな「やわらかーい、ゆっくりできるよおお!」という歓声と共に。 楽しげなパートナーの様子に、まりさも辛抱できなかった。 「まりさもゆっくりするうう! ……っ! ひぐうっ!!」 駆け寄るまりさの巨躯では、足元が見えない。そのため、ちゃぶ台にもろに下あごをぶつけていた。 派手な音が響いてひっくりかえるゆっくりまりさとちゃぶ台。ちゃぶ台の上のガラス皿がごろごろと重い音を立て、皿にのせていた果物を床に転がす。 「……ゆっぐりいたぐなっでぎだああああ!」 ひんひんと滝のような涙を流すゆっくりまりさ。 「まりさっ! れいむの赤ちゃんは大丈夫!?」 「……っ! だ、だいじょうぶ、ゆっぐりじでいるよおお」 何がわかるのだろうか、てゐにはうかがい知れないが、子供を心配しあう二匹には十分な母性の強さを感じる。 子供の大切さがひしひしと伝わる光景。このまま出産しても、二匹は母としての勤めを果たすことが可能だろう。 「ゆっ!? 果物さんだ!」 先ほどの衝突で床にこぼれた果物。 その桃の甘い香りにまりさが不意に気づいていた。 いつのまにか、涙は止まっている。その代わりに、大きな口の端からだらららと、留処ないよだれ。 二体はずるずると這うような動作で五個の桃を集める。 まずは仲良く、二個づつ。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー!」 ほほえましい二匹のやりとり。 ゆっくりが桃をかむたび、その果汁がだらだらと顎を伝い、畳と布団に染みをつくっていった。 あっという間に、部屋の本来の持ち主の好物ゆっくりのお腹に納まっていき、残すは一個。 もちろん、長年にわたって深く愛し合う二匹は奪い合ったりはしない。 まりさとれいむは桃をはさんで向かい合い、桃をお互いの口を押し付けあって持ち上げた。そのまま、双方から食べていく。 「むーしゃ、むーしゃ」 お互いが食べあうため、近づいていく唇。最後は二匹の唇がぺったりとくっついた。 「ゆううう、れいむのくちびる、あまーいよお♪」 「まりさのくちびるも、あまくてぎもぢいいいいー♪」 ぺろぺろと、お互いのごんぶとの舌が触れ合う。 ちゅちゅと響く不快な摩擦音。 「ぷはあああ! れいむのてくにっくがずごいいいいいいい!」 「ぢゅううう、んんんん……ぽん! ぷはああああ、まりざの力づよざもずでぎいいいいい!」 そのまま、本格的にお互いの唇を吸い合う二匹。 巨体同士が絡み合う度、湿り気を帯びた音がぐちゃぐちゃと音を立てる。 どうやら、安全な居場所を得たことで、もう一匹という気持ちが盛り上がりつつあるようだ。 興味深そうに見つめるてゐ。 だが、ゆっくりれいむに睨み返されてしまった。 性欲で血走った目を半眼にし、てゐをにらみつけている。 「ゆっ、なに見ているの! うさぎさんはここでゆっくりしないでね!」 「うさぎさん、ここはもうまりさとれいむのおうちなんだから、ゆっくり出ていってね!」 見られるのを気にするんだ。 その新たな発見に満足して、てゐは気を悪くしたふうもなく笑う。 「あ、ごめんね。ではごゆるりと……ゆっくりしていってね」 含み笑いをにじませながら、ゆっくりれいむにお別れを告げていた。 ゆっくりの巨体で骨組みが粉砕されていた障子を、静かに閉めて立ち去るてゐだった。 「ようやく、すっきりできるよ、れいむうううう」 「ま、まりさああああああ。誰よりもすっきりじだい! だいぢゅきいいいいい」 巨躯二体の絡みはすさまじかった。 ごろごろと体を擦り付けあって部屋を縦横に転がる。 その後を刻み付けるように、二体から分泌された粘液がたたみに跡を残していく。 子供の出る部分をぴちゃぴちゃとすりあせて、ますます興奮していくゆっくり。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆっひいいいぎいいいいいいい!」 興奮のあまり、行き立ちはだかる箪笥を二匹、ぶちあたって押し倒す。 地鳴りを立てて倒れ付す衣装箪笥。反動で開いた引き出しから、清楚な白の下着類がたたみの上にあられもなく広がると。 「にゅふうううううううう!!」 二匹がその上に転がりこみ、べとべとの体液に張り付かせて全身をまだらに染める。 「見えないいいいい! げど、まりざがあだだがあああああああい!」 ブラジャーかぶったような体制で両目を塞がれたれいむが、暗闇の中でますます相手の体を求めていた。パンツごしにすううぱああと、荒い息を繰り返していたまりさもすかさず応じる。 情愛を確かめる頬のすり合わせ。お互いのよだれがダラダラとこぼれて、頬にすり込まれていく。顔は真っ赤にのぼせ上がって、だらしない半開きの口が閉まる気配も見せなかった。 すり合わせながら、ぽやああと虚空をうっとりと眺めていた目が、次第に上に上にと高みを見つめる。 口からは、ぶっとい舌がべろんとのびて、はああはああと熱いむわっとした息を相手に吹きかけていた。 絶頂は近い。 ぐりぐりとこすり付けていた体を、ぎゅぎゅぎゅぎゅと小刻みにしていくゆっくりまりさ。 「ずっ、ずっぎりずるううう!? ぞろぞろ、ずっぎりじだい、じだいよおおおおおお!」 まりさの顔はびくんびくんと、危険なほどの痙攣して欲望の果てを望んでいた。 が、そんなまりさのアヘ顔を、欲情した瞳で視姦するれいむ。 「ゆふふふふ! ぞんな゛にそわそわして、がわいいよおおおおまりざあああ! ダメなのおおおおお、もうイグのおおおおお? ガマンできないのおおおおおおお? もうずっぎりしちゃうのおおおお!? 」 答える声はない。 まりさは舌が千切れるのではというほど目につきだして、びくびくと弛緩する体をますます小刻みれいむにすり合わせていく。 「あ゛せ゛ら゛な゛い゛て゛ええええ、ゆっぐりじでねええええ! もっ、も゛お゛ち゛ょっと゛! うっとりじようよおおおおおおお、まりさああああ!」 成熟したゆっくりほど、すっきりの前段階、うっとりの心地よさに貪欲だった。 パートナーのもうたまらないと吹き上げる熱に、ぞくぞくと興奮に打ち震えるゆっくりれいむ。 「まりざあああ、言っでええええ! れいむ、すっきりざぜでくださいって、言っでえええええええ!」 「んほおおおおおおおおおおおおおお! すっきりっ、ずっぎりじだいんおおおおお、ざぜでえええええ、れいむううううううううう!」 涙とよだれと汗と謎の液体で、ぐっちゃぐっちゃの顔で哀願するまりさ。 その惨めたらしい、情けを乞うような卑屈さに、れいむの体を貫く興奮。もはやれいむにも押さえがきかなくなる。 「ああんんんうっほおおおおおおおおおおお!!! いぐううううううっ! らめええええええんほおおおおおおおおおお!!!」 「イげるううううううう、うひいいいいいいゆううううううううう! うれじいいいいいよおおおほほおおおおおおおおお!!!」 二匹は、今まさに絶頂へ至ろうとしていた。 「な、なんなの、これは!」 へたれたウサミミが怒りに震えていた。 妖怪兎であるが、すらりとした背丈と赤い瞳が特徴の月の兎、鈴仙だった。 鈴仙の身分は、実質的には月からの逃走して永遠亭に居座った肩身の狭い居候で、永遠亭の主や薬師に体よく使われる立場。 そんなわけで、この三日間は不老不死不眠不休の師匠に付き合わされ、片時も気を抜けない実験の手伝いをさせられていた。 もう、すでに身も心も疲労の極地。 てゐと約束していた一緒に人の里に遊びに行く約束も断って、今はひたすらに自室の布団が恋しかった。 だが、自室のかなり前衛的にアレンジされた障子を開き、目の前に広がっていた光景は鈴仙の精神に止めを刺すものだった。 狭いながらも、お気に入りの調度品で統一し、永遠亭でもっともほっとできるそのマイルームは、巨大な二匹の生き物に占拠されていた。 「じょ、状況確認」 何とか、昔の月の軍人時代の教練を思い出して部屋の様子を確認する鈴仙。 部屋は荒れ果てていた。 ちゃぶ台はひっくりかえり、香霖堂で粘って購入したガラス皿にはひびが入り、イグサが香り立つ新しい畳も泥だらけ。襖には大穴、障子は骨がへし折られ、箪笥は引き出されて自らの制服や下着は無造作に散乱し、耐え難いことに一部が生き物にはりついていた。もはや、生き物の醜悪さは筆舌に尽くしがたいものに成り果てている。 鈴仙があれほど望んでいた布団などはもう見る影もない。 興奮した様子で絡み合う二匹の下に、下着類とともにしかれて二匹の愛の営みの舞台と化していた。もちろん、布団にも得体の知れない粘液が方針円状に広がり、ぱちんぱちんと体を合わせるゆっくり二匹の動きに合わせてしぶきが部屋中に飛散している。 許されるならば火を放ちたい。 鈴仙がそんな感慨に身を震わせていると、部屋の中央で絡み合うゆっくり二匹が、ぶぶぶぶぶぶと地震の最中のように揺れ始める。 まさか! 悪寒に駆られた鈴仙が部屋に踏み込もうとするが、すでに遅かった。 「のほおおお、すっきりー!!!」 目の前で高みに達していた。 愛しのマイルームが、ゆっくりどものラブホテルと堕したその瞬間だった。 全身を伸び上がらせて天にも昇る感覚に酔いしれるゆっくり二匹。 伸びきったその体が、今度は力を失ってしゅうううと横にへたりと広がる。疲労感に包まれて、至福の脱力。 しばらく、ひいいふううゆううという甘く荒い二匹の息と、無言で立ち尽くす鈴仙がその場に残されていた。 とろんとした目で、まりさを見つめるれいむ。 「ゆー……二人目もきっと今できたね!」 「ゆっ! 今の子供を生んだら、もう一人がんばろうね!」 満ち足りた幸福の言葉をかけあう二匹。 と、そのうち片方、まりさの顔がびくんと震えた。 「ゆっ! 今、お腹の子がゆっくり動き出したよ!」 「ゆ? ゆゆっ!? れいむの子も動き出したよおおお!」 出産間際であれだけの運動をしたのだから、子供も何事かと動き出すのだろう。 二匹、慌てて身を起こし、並んで部屋の中央に。そのまま、微動だにしない。 「ゆっぐううううううう!」 ゆっくりのとぼけた顔がこれほどまで辛そうな表情をするとは、鈴仙は知らなかった。 もしかして、死ぬのだろうとか。淡い期待をよせる鈴仙。死ねばいいのに。死ね。 それに応えるかのように、ゆっくり二匹の顔が、揃って苦悶の色をますます濃くしていった。 と、同時にゆっくりの下あごに少しずつ、黒い影が生まれていく。 穴だった。 肌を内側から裂くように、顎の下に黒い穴が広がり始める。 「んほおおおおおお……!」 あえぐ二匹。快楽などではなく、途方もない苦痛にこぼれた声だった。 果たして、どれだけの痛みなのだろう。歯茎をむきだしにし、目から滂沱の涙。どれだけかみ締めているのか、唇からはぽろぽろと餡子が一筋ながれていた。穴の付近からは餡子とも違う液体が流れて、布団の染みを絶望的に広げていく。 わけもわからず、そのゆっくり二匹の競演に見入ってしまっていた鈴仙。 だが、その黒い穴の奥からゆっくりの子どもの顔がうっすらと見えてきて、すべてを悟った。 「ま、まちなさい!」 自分の部屋での出産だけはやめさせたかった。 そうしなければ、自分の部屋をもう家畜小屋としか思えなくなる。 ぎゅっとふんばる二匹は、突然の乱入者にも身動きできないし、いまさら中止などできない。 そもそも、一刻も早く終わらせたい苦痛なのだ。 この、自分の体を真っ二つに引き裂いたような痛みは、出産直前に最大となり、そうして終わることがわかっているから耐えられる苦痛。さっさと終わらせたいのに、このバニーさんは何を言っているのだろう。 「でていってよ!」 鈴仙がまったく動かない二匹に業を煮やしてれいむの体を押すが、その重量はびくともしない。 出産直前のれいむの苦痛を増幅させただけだった。 「ゆぎいいいいい! いだいいいいいじぬうううううう! はなじでよおおおほおっ!」 あまりの血走った形相に、思わず手を離す鈴仙。 ふひふひと荒い息で痛みを逃すゆっくりれいむが、その血眼を乱入者に向ける。 「兎のおねえさん、ひどいことしないでとっとと消えてね!」 修羅場中の母となろうとしているれいむは、母の情愛から好戦的になっていた。 「なっ! あんたねえ、私の部屋から消えるのはあなたたちでしょうが!」 ゆっくり相手だとわかっていながらも、思わずやり返す鈴仙。 だが、いきなり乱入しての私の部屋宣言に、その様子を横目で見ていたゆっくりまりさが激昂する番だった。 兎さんからもらったおうちなのに、このバカうさぎは何をわけのわからないことを言うのだろう。 人のうちに入って、自分の部屋だと主張することがいけないことぐらいわかってほしいゆっくりまりさ。 「ごちゃごちゃうるさいよ! ここはれいむとまりさのおうちだよ!! いまからこども産むんだから さっさとでてってね!!」 「兎さんからもらったおうちから、出ていってね!」 れいむとまりさの息のあった応酬に、鈴仙は思わず半笑い。 「あー、その兎さんって誰?」 なんとなく、鈴仙は事情が読めてきていた。 「名前はわからないけど、おねえさんより小さくて、品がよくて、やさしくて、じゅんしんな兎さんだよ!」 「うん、そしてれいむみたいな綺麗な黒髪の兎さんだよ!」 「ああ、てゐ、ね」 悪戯兎のニヒヒという品が無く、邪気に満ちて、腹黒な笑顔を頭に思い浮かべる鈴仙。 それにしても、ここまで洒落にならない悪戯をされたのは久しぶりだった。 ふつふつと部屋の惨状を見るたびに煮えたぎる鈴仙の胸のうち。 「それじゃあ、お姉さんはとっとと消えてね!」 「バカじゃないなら、わかるよね。れいむたちはもうすぐ子供が生まれそうなの! 消えてね!」 本来、穏やかな気性の鈴仙。それなのに、その怒りの炎が消えぬよう丹念に油を注ぐ妊娠ゆっくりたち。 鈴仙は腹を決めた。 幸い、鈴仙の手には師匠の永琳から廃棄を頼まれた資材が一山。 その中に、チューブのように太いゴムを見つけ出していた。ゆっくりたちの体を三周して、いまだあまりあるほどのゴムの束。 すううと、鈴仙の狂気の瞳が細められる。 目の前には、間断なく襲い掛かる出産の苦痛に顔を歪めながら、それでも苛々と鈴仙をにらみつける二匹の巨大なゆっくり。 「れいむううう、このお姉さん邪魔なのにどうしているのおおお?」 「きっと、バカなんだね! バカなのは仕方ないから、ゆっくりもう一度いうよ!」 「うん、れいむはやっぱり親切だね! それじゃあ、いうよ! ゆーっくーりー、きーえーてー!」 「わーかーるーよーねー?」 鈴仙はゆっくりたちの心底見下した視線を受け止めて、深く頷く。 「そう、わかったわ」 師匠にこき使われて、てゐに悪戯されて、ゆっくりに出て行けといわれるこの現状の憤りを、鈴仙はしっかりと理解していた。 「ゆっ! ゆっくり話したかいがあったよ!」 「それじゃあ、ゆっくり子供を産もうね! 幸せな家族、つくろうね!」 「うん! 幸せになろうねー!」 向かい合って、安堵の表情を交し合うゆっくり二匹。 瞬間、鈴仙は動いた。 俊敏にゆっくりまりさの後ろに回りこむと、全身の力をこめて体当たりする。 その衝撃にびくんと前に飛び出したまりさ。 正面にいたのは、ゆっくりれいむだった。 「むぎゅ!」 唇をべったり密着させるゆっくり。 何が起こったのか、困惑して離れようとする。 だが、できなかった。 鈴仙の狂気の視線を受けたれいむが、平衡感覚をなくし、離れようとして逆にますますまりさに密着してしまうからだ。 「ゆっ!? ゆっくり離れてね、れいむ!」 「まりさこそ、れいむの正面にこないでゆっくりしていてよ!」 文句をつけあう二匹。正しいのはまりさだが、鈴仙は親切に教えてあげたりはしない。ただ無言で、ゴムチューブを伸ばしてゆっくりたちを縛り上げていくだけだ。 やがて、鈴仙の手で十字に固くゴムが結ばれ、中心に向けてしめあげられるゆっくりたち。 向かい合って、唇を強制的に合わせたまま固定されていた。 「ゆゆゆゆゆ!?」 「ぐっ、ぐるじいいいいいい!」 かろうじて唇をはずしての苦悶は、重圧からにごりきったダミ声となっていた。 元の、気に障るほどに明るい声の面影は、もうどこにも見受けられない。 「ああああああ、あが……あがちゃ……」 赤ちゃんが死んじゃう。れいむたちはどうなっていもいいから、赤ちゃんだけは産ませてください。 そんなゆっくり夫婦の嘆願も、もう締め上げるゴムのきつさに言葉にならなかった。 鈴仙はとりあえず拘束できたことに満足する。しばらく、このままで反省されたいと、ただそれだけの行動。 だが、赤ちゃんが詰まってぱんぱんの親ゆっくりの体にはすさまじい拷問だった。めりめりと悲鳴をあげる赤ちゃん。一週間、穴倉の中でゆっくり大切に育て、新しい家族の誕生に思いをはせたあの日々が、すべて団子の出来損ないで終わってしまう。 「もうこんな目に会いたくないなら、早くここから出て行くことね」 鈴仙はゆっくりを殺すという選択肢をとらなかった。後始末が大変だろうし、命を弄ぶのは本意ではない。 それに、鈴仙には復讐を誓うべき対象は別にいる。 「まあ、あなたたちはてゐに騙された被害者でもあるのよね」 友人の兎の顔を思い浮かべ、ため息。 怒るのも挑発にのってしまっているようでもどかしい鈴仙だった。 「これから、ここの片づけをする道具をもってくるから、それまでに転がるなりして永遠亭から消え失せれていれば何もしないわ」 淡々と言い残して背中を向ける鈴仙。 が、部屋を去る前にもう一度振り返る。 「でも、今度から永遠亭の半径100m以内で見かけたら、殺すから」 赤い目が、本気の意思を潜ませて冷ややかに輝いていた。 部屋を後にした鈴仙は、すぐに身を翻して離れの方へ。 駆け出して鈴仙の前に、その波長に捕らえられたてゐの姿があらわれて、驚いたようにこちらを振り向く。 「こらっ! てゐ!」 しかりつけると観念したかのように立ち止まっていた。 けど、反省の色はない。憎たらしく、べーと舌を出す真似。 まるで子供みたいと鈴仙は思った。 本来のてゐは妖怪兎のリーダーで、寿命もそこらの妖怪がはだしで逃げ出すほどの長寿。永琳たちがくるまでは永遠亭を指導し、永琳たちの来訪時には交渉をもって妖怪兎たちの種の安寧を確保した実績を持つ、老練した妖怪だ。 人間たちにしかける悪戯も機知にとんでいて、騙されたことすら気づかないような嘘を思いつける知恵者でもある。 それがなぜ、自分にはこんな子供じみた悪戯ばかりするのか。 鈴仙はわかっていた。 だから、まったくもって本気で怒れない鈴仙。 苦笑交じりの笑みで、てゐに語りかける。 「てゐ、悪かったわね。最近、ずっとかまってあげられなかった」 永琳の助手以外にも何かと忙しくて、一月あまりろくな会話をしてこなかった気がする。 「なっ、なにを言っているの!」 激昂するてゐに向けられる鈴仙の赤い瞳は優しげだった。 そのまま、一呼吸で歩み寄りぎゅうと抱きしめてあげると、てゐの達者なはずの口が言葉を失う。 そのぬくもりに、どうしようもなくてゐの心が満たされてしまう。 「今日からしばらくは暇だから、いっしょにいようね」 「……うー」 用意していた拒絶の言葉もどこへやら。 芸も無く頷くてゐに、満足げな笑顔をもらす。 「じゃあ、今日からてゐの部屋で私も休むわね」 「え、どうしてー!」 「あなたが、めちゃくちゃにしちゃったでしょ、私の部屋。どこで休めばいいのよ」 「う、確かに。し、しかたないなー!」 なかなかに微笑ましい姉妹のような妖怪兎たち。 これから、夜通し積もる話でもするのだろう。 だが、その前にてゐは悪戯に使った道具のことを思い出す。 「あ、そうだ。あのでっかいゆっくりたちはどうしたの?」 「今は動けないようにしているけど、解いて逃がしてあげるわよ。あれだけ脅しておけば、もうこないでしょうし」 やっぱり鈴仙は甘いなあとてゐはつくづく感じる。 そこが、てゐが一番気に入っているところなんだけどねと、ほくそ笑むてゐに、また何かたくらんでいるのかと困り顔の鈴仙。 一路、自分の部屋へ向かう二羽の妖怪兎。 だが、たどり着いた自分の部屋はがらんどう。 ゆっくり夫婦の姿はすでに部屋から消えうせて、影も形もなくなっていた。 続きへ
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「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりれいむの声は雑踏の足音にかき消されていった。 「ゆ…?」 ゆっくりしないどころか誰一人見向きもしないことにれいむは首をかしげた。 しかしれいむはめげずに辺りを歩き回りながらみんなをゆっくりさせるために奔走する。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 しかし殆どの人に無視され、構ってもらえてもせいぜい鬱陶しそうにれいむを一瞥するだけだった。 れいむは何度も声をかけようとして振り向きもされず足蹴にされた。 いくら声をかけても忙しそうに人はどこかへいってしまった。 どんなにがんばっても誰もゆっくりしてくれないことにれいむの心は段々と磨耗していった。 「ゆ…みんなゆっくりしていってよ…」 れいむはしょんぼりとしながら路地裏にゆっくりプレイスを求めて入っていった。 「ゆ!いぬさんだ!ゆっくりしていってね!」 れいむは路地裏でゴミ箱をあさる野良犬たちを目撃した。 野生の動物なら人間達と違ってゆっくりしてくれるはずと思ったれいむはうれしくなって思わず声をかけた。 「グルルルル…」 しかし飢えた野良犬たちの目には余裕や穏やかさとは無縁の 野生の獰猛さと、都会で生きていくために獣としてのプライドを捨てて手に入れたしたたかさだけがあった。 その瞳にはれいむは餌以外に映るはずもなかった。 「ゅ、い、いぬさん、ゆっくりして…!?」 「バゥゥウ!」 野良犬の行動は素早かった。 しかし残念ながら都会を生きる野良犬には狩りをするのに必要な経験がたりなかった。 すぐさまれいむに飛びつこうとしたがその殺気をれいむに気付かれ飛び退かれて 餡子に刺さるはずだったキバはリボンを引きちぎっただけに終わった。 「れいむのだいじなりぼんがああああああ!!!」 れいむは白目をむいて泣き喚きながらも走り出す。 野良犬も負けじと追いかけ、すぐに追いつくかに思われた。 「だずげでええええええええ!!!…ゆ?」 れいむが路地裏を飛び出した瞬間、野良犬は口惜しそうに走るのをやめてきびすを返してまた路地裏に帰っていった。 通りで暴れれば危険な野良犬としてすぐに保健所に通報されることを野良犬は知っていた。 仲間の尊い犠牲を経て学習した野良犬の知恵であった。 「ゆ…ゆっくりしたいよ…」 れいむは意気消沈して俯きながら大通りを歩いた。 人々は稀に奇異の視線を向けるだけでれいむのことはあって無いような扱いだった。 そうしている内にだんだんと日が傾き、夜が近づいてくる。 「ゆ…よるになればきっとみんなおねむになってゆっくりするね!ゆっくりしていってね!」 れいむの瞳に再び力が戻った。 れいむはぴょんぴょんとはねながら「ゆっくりおやすみなさい!ゆっくりおやすみなさい!」と声をかけてまわった。 その時は何故看板を持った男の人が舌打ちしたのかれいむにはわからなかった。 「どうぢでゆっぐりならないの゛おおおお!?」 夜が深まるにつれて、町はより煌びやかにその騒々しさを増していった。 看板を持った男たちが忙しそうにするスーツの男達にこれまたせわしなく話しかけ 余裕の無い態度で受け答えをする。 酔っ払った男達は絶え間なく知り合いの悪口を言い合い、女は隙の無い目で男を誘っていた。 そこはゆっくりとは程遠い有様があった。 「ゆっぐりできない…みんなゆっぐりでぎないよおおお…!」 れいむはぽろぽろと涙をこぼしながら町のハズレへと歩いていった。 その方向にはゴミ捨て場があって、とても臭くて汚かったがれいむにはもはやそんなことを気にする気力はなかった。 ぼーっとゴミ捨て場を眺めているとそこにガサゴソと動く黒物体が居るのに気がついた。 「ゆ!まりさだ!」 それはゴミをあさるゆっくりまりさの姿だった。 「ゆっくりしていってね!まりさゆっくりしていってね!」 もはやゆっくり出来る相手は同じゆっくりしか考えられなかった。 れいむは嬉し涙を流しながらぴょんぴょんと歓喜の呼び声をまりさにかけた。 まりさがれいむの方を振り返った。 「ここはまりさのゆっくりプレイだよ!ゆっくりでていってね!ゆっくりでていってね!」 その言葉にれいむは愕然とした。 「どおぢでぞんなごどい゛う゛の゛お゛お!?いっぢょにゆっぐりぢようよ゛お゛お゛お゛!!」 「そんなこといってまりさのごはんをとるきだね!そんなわるいゆっくりはゆっくりしね!!」 「ゆっぐりいいいいいいい!!!!!!」 まりさがれいむを餌場から排除しようと体当たりを始めた。 その時れいむはもはやこの世にゆっくりは無いことを悟った。 ゆっくり出来ないことを理解したれいむはゆっくりと生きることを放棄し、そっと目を閉じた。 このSSに感想を付ける
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昨今の幻想郷では、ゆっくりが餡子の材料、ペット、ストレス解消など様々な利用方法をされている。 そして大工の場でもゆっくりが使われていた。 家を建てる際に草木を撤去し、凸凹とした土地を平らに均す必要がある。 その時にゆっくりを使うわけだ。 まず平らにしたい土地を柵で囲っい、れみりゃ除けに網をかけてその中にゆっくりを何匹か放り込む。 逃げられないようにするためと、無必要な部分まで整地されないようにするためである。 ちなみに中にいれるのはゆっくり霊夢、それも母ゆっくりだけだ。 まりさ種を入れると何かと理由をつけてさぼったり、それが原因でゆっくり同士喧嘩しだすのでNG。 ありす種を入れると他種のゆっくりが犯されて殺されるのでNG。 ちぇん種は仕事に対して集中できないうえ目を離すと遊びだすのでNG。 みょん種などは話が通じるか分かり辛いのでNG。 そんなわけで割と素直で真面目なれいむ種が使用されるわけである。 今日もまた新たなれいむ家族が箱に詰められて現場へと連れてこられた。 箱の中からはゆっくり家族達の声が聞こえる。 「ゆっくり出してね!」 「おかーしゃん、ゆっくりできないよ!」「くらいよ!」「せまいよ!」「こわいよー!」 「うるさいなぁ。ほら着いたぞ」 大工の一人が箱を開けて中を確認する。 母ゆっくり一匹。子ゆっくり二匹に赤ちゃんゆっくり二匹。 その中から母ゆっくりだけを取り出して柵の中へと置いた。 「ゆ! ひろいよ!」 柵の中は今まで閉じ込められていた箱に比べればずっと広い。 母ゆっくりは清々しい表情をする。 「わたちたちもゆっくりだちてね!」「だしてだして!!」 子供たちの声を聞いて子供たちを思い出したのか、母ゆっくりは大工へ向かって抗議する。 「れいむのこどもたちもゆっくり出してあげてね!!」 「だめだ。お前が仕事を終わるまでこいつらは預かっておく」 「ゆ"!? なんでそんなこというの!? ゆっくりだしてね!!」 「聞けよ。仕事が終わったら放してやるって言ってんだろ」 「おじさん、なにいってるの? なかなの?? はやくこどもをだしてね!!!」 「あー、めんどうな奴らだな」 こんなやり取りを今までに何度もしてきたので大工はうんざりだという顔をする。 「仕事の説明はあそこにいる他のやつらに聞け。仕事が全部終わったら子供に会わせてやる」 同じ柵の中、向こう側で寝ているゆっくりの群れを指で示してそれだけ言うと大工は背を向けて去って行った。 「ゆっくりまってね!! こどもたちをかえしてね!!」 しかし大工は聞かず、そのまま自分の小屋へと帰った。 今晩の食事はちょうど手に入った4つの饅頭だ。 そうして残された母ゆっくりはしばらくの間、すでにいない大工や子供たちに話しかけたり、 柵に向かって体当たりしていたがどれも適わなかった。 その音に目を覚ました他の母ゆっくり達四匹が集まってきた。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 「ゆ? ゆっくりしていってね!」 他の母ゆっくり達の挨拶に母ゆっくりも挨拶を返す。 「れいむもこどもたちをもってかれたの?」 「ゆ! そうだよ! ゆっくりしないでたすけなきゃ!!」 母ゆっくりは再び柵に向かって体当たりしようとする。 「ゆっくりもんだいないよ!」 「しごとがんばればかえしてもらえるよ!!」 と、他の母ゆっくり達は言う。 「それが本当かどうかわからないよ!!」 「だいじょうぶだよ! さいしょにいたゆっくりはこどもたちかえしてもらってたよ!!」 「ゅ! しあわせそうにおそとへいってたよ!!」 それは他のゆっくりに、がんばれば子供を返してもらえると示すための大工によるヤラセのようなものだ。 ちなみにその子供を返してもらったゆっくりは他の現場へと連れていかれたが、残るゆっくり達は知る由もない。 ただ、仕事を頑張れば子供と一緒にゆっくり出来ると信じていた。 「じゃあだいじょうぶだね! しごとってなにをするの!?」 他の母ゆっくり達の言葉に安心した母ゆっくりはようやく仕事する気になったようだ。 「ゆっくりせつめいするね!!」 「しごとはここのじめんをぺったんこにするだけだよ!! たべものはここにあるくさだよ!!」 「でもくさをいっぱいたべないでね! これいがいはないからね!!」 「ゆっくりわかったよ! みんなでゆっくりがんばろうね!!」 さすがは母ゆっくり、今の説明で理解できたようだ。 母ゆっくりの群れなので食事の量の管理も問題ないだろう。 それから母ゆっくり5匹のお仕事が始まった。 昼間は小石を柵の隅へと退かしたり、口や大きな体を使って地面を平らにしていく。 また、食事と整地も兼ねて草を食べていく。 疲れたらそれぞれ自由に休んでいた。 暗くなるとゆっくりタイムだ。 といってもこの辺りは明かりになる物もないのでみんなで擦り寄って眠るだけだが。 子供たちのことが心配ではあったが、仕事が終わればまた家族でゆっくり出来る。 それに共にがんばった他のゆっくり達の家族とも一緒に遊ぼう。 最初ここに連れてこられた時は不安でしょうがなかったが、甘い未来を想像するとゆっくり出来た。 それから一週間経ったころ、大工は様子を見にきた。 最初は凸凹で草木もたくさん生えていたこの土地はしっかり整地されていた。 草一本生えず平らになっていた。 「いい感じだな。よくやったなお前たち」 「ゆっくりがんばったよ!!」 「ゆうしゅうでごめんねー」 「ゆー♪ゆー♪」 自分たちのがんばった仕事を褒められてゆっくり達は嬉しそうだ。 仕事の最後の方は食べるものも少なくなって辛かったが、労いの言葉にゆっくり達の言葉は満たされた。 「がんばったのだからご褒美をあげないとな」 「ゆ! おぼえてるよ!! はやくこどもにあわせてね!!」 「あとおなかへったからごはんもってきてね!!」 「こどもたちはゆっくりしてる? ゆっくりあいたいよ!!」 「ごほうびごほうび!! こどもとたべものちょーだいね!!!」 「こどもたちといっぱいたべたいよ!!」 ご褒美と聞くと5匹の母ゆっくり達は口を揃えて望みを言う。 「じゃあ、そこまで連れていくからこの箱に入れ」 大工はそう言うと、持ってきた5つの木箱をゆっくり達のいる地面へ置く。 「はこ? はこはいやだよ!」 「せまいからゆっくりできないよ!!」 「お前たち疲れてるじゃないか。だから箱に入れて運んでやるんだよ」 「じゃあもっと広いはこにしてよね!!」 「まっててあげるからゆっくりよういしてね!!!」 「嫌だよ阿呆饅頭。とにかく箱に入らないなら食事無しで子供にも会わせないからな」 図々しいゆっくり達もさすがに食事と子供を盾にされると贅沢言わなくなり、自分から箱へと収まった。 「ゆっくりはこんでいってね!!!」 リヤカーにゆっくりの入った木箱を5つ積むと、大工はリヤカーを引いていく。 何も見えずにただ揺らされるゆっくり達は不平不満を垂らす。 「ゆっくりできないよ! いつつくの!?」 「おそとがみたいよ!」 「ゆれがはげしいよ! ゆっくりはこんでね!!」 しかし大工にとってそれは雑音にすぎない。 無視してリヤカーを引いていく。 そして数時間後、ゆっくり達入った木箱の蓋が外されて地面へと降ろされる。 「ゆっくりできるよ!」 「ひろいよ! くさがいっぱいあるよ!!」 「ゆ? こどもたちは? どこにいるの!?」 「ゆっくりしないで会わせてね!!」 「今度はここで仕事だ。前と同じだからがんばれよ」 「ゆ”! どういうこと!! やくそくがちがうよ!!」 「ゆっくり達のしごとはもうおわったんだよ!!」 「仕事はあそこだけなんて言ってないだろう?」 「い、いやだよ!! もうしごとしないよ!!」 「そうだよ!! はやくしょくじとこどもをもってきてね!!」 「そしたらしごとすることかんがえてもいいよ!!」 「食事ならそこにいっぱい生えてるじゃないか」 大工の指差した先には確かに草木が茂っていた。前の土地よりも多いかも知れない。 「あまいのがいいよ!」 「おかしもってきてね!」 「あとこどももね!!」 「こどもは仕事が全部終わったらって約束だろ? じゃあ後はがんばれよ」 ゆっくりとの無駄な問答に付き合ってられないと大工は去って行った。 「ゆ"う"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"ぅ"!! まっでえぇぇぇぇぇ!!!」 「せめて! ひとめだけでもみせてね!!」 「ゆっくりまたないとおしごとしないからね!!!」 最後のゆっくりの言葉に反応して大工は振り返る。 「一か月後に仕事ができなかったら子供は食べるからな? しっかり仕事しとけよ?」 今度こそ大工は去っていった。 後に残されたのは柵に囲まれた広大な土地と5匹のゆっくり達だけだった。 今度の仕事場は大豪邸でも建てるのか前に比べてずっと広い。 5匹のゆっくり達は誰も何も言わず呆然と佇んでいた。 一ヶ月後に見事に仕事をやり遂げた5匹のゆっくり達はご褒美をもらえた。 苦しむことの無いよう鉈で一刀両断。これがご褒美だ。 きっと子供たちに会えるはずだ。仕事を始めた日には死んでいた子供に。 きっとあの世でね。 終 by ゆっくりしたい人 主にゆっくりれいむ家族を虐めたいだけ。虐待というか人質とって強制労働というべきか。 ある種グッドエンドっぽいけどあの世で子供に会えるか決めるのはえーき様。 このSSに感想を付ける
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ゆっくり畑 リリーホワイトが嬉しそうに弾幕をばら撒きながら喜びの声を上げている季節。 昨日耕した畑に種を植えようと向かったのだが。 「「「「「「んほぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」 博麗の巫女やら普通の魔法使いやらの顔―ゆっくりがいた。 暖かくなってきたからだろうか、互いにすりすり仲良さそうにと頬を擦りあっている。 (そういえばゆっくりは頭から茎を生やすよな・・・) それを思い出し、ちょっとした実験をやってみたくなった。 「れいむきもちいいよ!!!」 「まりさ!そろそろれいむもすっきりするよ!!!」 「「すっきりー!!!」」 人目もはばからずすっきりしていた一組の番がすっきりする。 頭からにょきにょきと茎が生えてきて― ブチッ 「いやぁぁぁぁぁ!!!」 「まりさとれいむのあかちゃんがぁぁぁぁ!!!」 ある程度の所で根元―れいむの頭のてっぺんごと茎を取り払う。 「なんでごどずるのぉぉぉ」 「いだいぃぃぃぃぃ」 泣き喚く声を無視し、そのまま畑に茎を植える。 よし、そのまま放っておくと萎んでしまう筈の茎は元々の青々さを保ったままだ。 そのままだと五月蝿いのでこの2匹には肥料になってもらおう。 畑の内の一列に、計5本の茎を差し替えた。 普通ならゆっくりする事無く実が付く茎が、青々としたまま立っている。 何と言うか、それは非常にゆっくりしていると思った。 さて、次の列に取り掛かろう。 「おほぉぉぉぉぉ!!!あと少し!!!」 「すっきりぃー!すっきりーー!!もうひとつおまけにすっきりーーー!!!」 気分良くすっきりした番から蔓がにょきにょきと生えてきた。 それも2匹ともである。 「あかちゃんができてきたね!」 「とてもゆっくりしたこになるといいね!!」 「でもたべものをたべないとみんなゆっくりできなくなるからもどろうね!」 和やかに話をする2匹。 ひょいと2匹を持ち上げる。 「「ゆゆー、おそらをとんでるみたいー」」 暢気に喜んでいる2匹を、畑に空けた穴へ、隣り合わせにして入れる。 「ゆ、じめんさんがめのまえにみえるよ!」 赤ちゃんが出来ているためにジャンプして越えられそうも無い2匹。 この後は当然土をスキマに入れて固定する。 「!!??」 「!?!?」 口の上まで土を入れた為に何を言っているかさっぱり分からない。 何、気にする事はない。 これも5本―もとい5匹づつ行う。うち1匹は番を肥料にし、うち1組は頭まですっぽりと土を被せた。 さて、最後の1列だ。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・かわいいあかちゃんだよ・・・」 「ZZZZZ・・・・・・」 頭に茎を生やし満足した一部の番は疲れてかどうかは知らないが眠っていた。 ばれないように片方を肥料にし、母体を持ち上げる。 その後に底を取り払い、中身がこぼれないように畑に置く。 「ゆ゛!?」 「おっとごめんね、うとうとしてて倒れちゃいそうだったから倒れないようにしてあげたんだよ」 「なーんだ、おにいさんありがとう!!!」 「それじゃゆっくり眠っててね、起こしちゃってごめんね」 「うん、ゆっくり眠るよ・・・ゆぅ、ゆぅ・・・」 これまた畑の1列に5匹分置く。 それぞれ埋める高さを調節し、茎は大体どのゆっくりからも同じ高さにでているようにした。 これでゆっくり畑の完成である。 さて、どの茎が一番早く収穫できるだろうか? さっと水をやってその日は終了とした。 1日目 茎だけのものは変わりが殆ど無い。 草花のような成長速度である。 そのまま埋めた所は通常と同じように育っている。 違うのは声を掛けてくれる親がいない、ということだろうか。 まだぽつんと丸いものがくっついているというような感じである。 母体の目はまだ周囲を見る事が出来るのだろうが、 足を切り落とした方は― 「ゆゆ、うごけないよ・・・だれかたすけてね・・・」 「どうしたんだい?」 「ここからうごけないよ!おうちかえりたい!」 悲しそうな声を上げる母体。 しかし実験のため、動かす訳には行かない。 第一足を切ったのだから下手に動かせば死んでしまうだろう。 実の方は・・・これもまた丸いものが付いてきた感じだろうか。 「あかちゃんが落っこちちゃうのは駄目だよね?おかーさんになるんだからゆっくり頑張ってね」 「ゆゆ・・・がんばるよ」 唯一会話ができるこのゆっくりを元気付けると、それぞれにまた水を撒く。 大体、通常1週間位で赤ゆっくりは地面に落ち生まれると言う。 畑で育てていくとどうなるのだろうか? 4日目 そのまま埋めたゆっくりと足を落としたゆっくりの茎にはそれぞれの親が分かるようなゆっくりの実が付いていた。 埋めた親ゆっくりの目は空ろで、何処を見ているのか分からない目をしていた。 「ゆー、ゆー」 何も知らない埋めゆっくりの赤ちゃんはただその場でゆらゆらと揺れていた。 「ゆ、なんだかまえよりらくになってきたよ!」 足を切り落としたゆっくりは前より元気だった。 ちょっと足元を掘り返してみると・・・根っこが生えている。 「地面さんが栄養をあげているんだよ」 「ゆゆ!じめんさんはすごいね!!」 もう動けなくても足切りゆっくりは完全に植物状態でいられるだろう。 一方茎だけの方は少しずつ成長してはいるものの、実をつけるまでには至らない。 ・・・もしかして赤ゆっくりの部分ができないと駄目だったのか? もう暫く観察してみよう。 7日目 茎だけのものは通常の植物並みの成長速度を保っている。 埋めゆっくりは黒ずんではいない為生きているのだろうが、反応も殆ど無い。 掘り返してみたが根が生える気配もなく、生ける屍状態であった。 一匹だけ落ちる前に食してみる。 「ゆ゛っ」 甘さ控えめの饅頭が出来ていた。 「ゆっきゅりおちるにぇ!」 埋めゆっくりから遂に赤ゆっくりが誕生した。 「ゆっきゅりちていってにぇ!!!」 「ゆゆ、おきゃーしゃんは?」 「きっとレーミュのためにごはんをとりにいってりゅんだにぇ!」 「ゆっきゅりまつよ!!!」 どうやらその場に留まり続ける事を選んだようだ。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 足きりゆっくりはまた寝ていた。 折角なのでこちらも味を見る事にする。 「ゆぎゅっ」 こちらは栄養がたっぷり行き届いた所為だろうか、かなり甘くなっていた。 さて、赤ゆっくりがそろそろ生まれる頃だ。 「起きろー、そろそろ赤ちゃんが生まれるぞー」 「ゆ!あかちゃんどこ?」 目をぱちくりさせて赤ゆっくりを探す足切りゆっくり。 「ゆっくしちていってにぇ!!!」 埋めゆっくりよりも立派な茎から赤ゆっくりが落ちる。 2、3、4…次々と落ちる。 「おきゃーしゃん!おにゃかしゅいたよ!!!」 「おなかすいたの?じめんさんからえいようをもらってね!!!」 「どうやりゅの?」 「じめんさんがげんきにしてくれるんだよ!!!」 「じめんしゃん!ごはんちょうだいにぇ!!!」 こちらもその場にそのまま留まる事になった。 他の喋れない足切りゆっくりからも赤ゆっくりが落ちる。 いずれもその場に留まるようだ。 果たしてこの赤ゆっくり達はどうなるのだろうか。 30日目 埋めゆっくりから生まれた赤ゆっくり達はなす術なく8日目には全滅した。 足切りゆっくりから生まれた赤ゆっくりはその殆どが死んでしまったが、何匹かは地面に根を下ろす事が出来た。 今では親と同じように頭から小さい茎を生やしている。 「ゆっきゅりそだちぇるにぇ!」 「どぼじでずっぎりじでないあがぢゃんがらぐぎがでるのぉぉぉぉ」 一部茎の生えた赤ゆっくりを少し離れた所に植え替える。 きっとこの赤ゆっくりは長く育つだろう。 茎だけ植えたものはしっかりと根付いており、すくすくと成長していた。 しかし赤ゆっくりが生まれてくる気配は無い。 育ち方からして秋に何かが起こるだろうと考え、そのまま育て続けた。 200日目 秋に活発になる神様姉妹の喧嘩がよく起こるような秋。 足切りゆっくりとその子供達はゆっくりしていた。 子供も成体サイズとなり、足の下はびっしりと根を張っていた。 すっきりする事もなく頭には実を付け始めている。 「ゆっくりできるね!」 「じめんさんのおかげでゆっくりできてるね!」 さて、茎だけの方は・・・と。 子ゆっくりサイズの実を付けていた。 しかし喋ることもなく、表情を買えることも無い。 中を割ってみると、そこには大量の小さいゆっくりの粒が入っていた。 一粒口に入れるが、これが中々硬い。 もしかしたら種なのかもしれない。 ゆっくりの中身は餡子だった。 餡子の種といったら― その日、いくつかのゆっくり種を持ち帰り、小豆を作る要領で煮ていく。 「うん、コレは小豆だ」 こうしてゆっくり小豆が完成する事となった。 このゆっくり小豆の茎や実、種を普通のゆっくりに食べさせた所。 「ゆっくりをころしたゆっくりできないゆっくりはゆっくりしね!!!」 と他のゆっくりに嫌われたようだ。 どうやらこれはゆっくりの特性を受け継いでいるようである。 色々使えそうだなと、頭の中でそろばんを弾いていた。 270日目 ゆっくり小豆の茎は枯れ落ちていた。 足切りゆっくりは地面に喋らない赤ゆっくりを落とし黒ずんでいた。 この赤ゆっくりは春に芽を出すのだろうか。 もし春に芽を出すのであればそれは喋るのだろうか、それともゆっくり小豆になるのだろうか。 来年の春が楽しみだ。 これからはゆっくり小豆を外側に埋め、中で野菜を育てて行こうと考えていた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき 植物型に増えるゆっくりなのだから植物のように育ててみました。 中が餡子なので植物の方に傾けば小豆になりそうです。 外敵とかが出てきたり目の前で野菜を育てたらどうなるのでしょうか。 今まで書いたもの 博麗神社にて。 炎のゆっくり ゆっくりを育てたら。 ありす育ての名まりさ 長生きドスの群 メガゆっくり このSSに感想を付ける
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鰤たんのゆっくり 数日前からゆっくりまりさを飼っている。 というより、単に室内に軟禁している。 食べ物は一切与えていない。ある実験をする為である。 そして今日がその頃合。俺はまりさを閉じ込めていた部屋の戸をガラリと開けた。 「ゆっ・・・!おにいさん!まりさおなかすいたよ!!ごはんちょうだいね!!」 俺の姿を認めるや、すぐに擦り寄ってきて飯の催促。「ゆっくりしていってね」の一言も無い。 家に連れてきた時に比べ、まりさの体は大分やつれているように見える。 ぽよぽよと跳ねる動きも力無い。放っておけば今日あたり餓死しそうだ。 「はっはっは、まりさに言われたごはんの用意に少しだけ手間取ってね。ちょびっととは言え待たせてすまんね」 「ゆっくりしすぎだからね・・・もうまりさはおなかがぺこぺこなんだよ・・・おなかすきすぎていたいからね・・・」 野生で遊んでいたまりさに「好きな食べ物を食べさせてあげるから、うちにおいで」と誘ったのが事の始まりだ。 まりさの注文は、蜂の子入り蜂の巣の蜂蜜がけ。自然界でこいつらが手の届く範囲では、最も上等なご馳走だろう。 俺も子供の頃は痛みに耐えてよく食べたものだ。 まりさも以前に食べた時の味を思い返したのか、よだれを垂らして「ゆっくりはやくもってきてね!!」と騒いでいた。 それ以降俺はまりさと顔を合わせることをやめ、覗き穴から観察することにした。 まりさは俺がいない時でも「まだかな!まだかな!まだかな!」と連呼しながら、 少しでもごちそうを美味しく食べようと、部屋中を駆け回ってお腹を空かせようとしていた。 それが翌日になると、「ゆぅ〜〜〜!!ゆっくりしすぎだよ!!はやくごはんちょうだいね!!」と苛立ち始めた。 更に翌日になると「なにしてるのおにいさん・・・まりさおなかすいたんだよ・・・」と、か細い声が聞こえるだけになった。 その翌日ともなると、「ゆ・・・・ゆ゛・・・・・」と床にへばって呻き出した。 そこから更に二日間熟成させ、今の状態が完成したよ! 「さあ、約束どおりごはんを用意したよ。ゆっくり食べてね!!」 「ゆゆ!ゆっくりしないでたべるよ!!」 ゆっくり食べろっつってんだろうが。 ともあれ、ごはんがもらえると聞いてまりさの目に光が戻って来た。良いことだ。 さて、ここからが実験の本番である。 「ただし!!」 「ゆっ?」 「お前にはこの二つのどちらか一方を選んでいただく」 そういって俺が差し出したのは、それぞれ透明な箱を覆い被せた二つの食べ物。 透明な箱は非常に安定しており、ゆっくりに開けたり倒したりすることは不可能です。 「一方は完熟マンゴープリンだ! お前らより数段美味いもん食ってる人間様でも舌鼓を打つ高級品! ほ〜ら、フルーティな芳香が鼻腔をムンムン刺激するだろう?」 「ゆ・・・・ゆゆゆゆゆゆゆ!!すっっっっっごくおいしそうだよぉぉ〜〜〜〜!!」 まあこいつ鼻無いけどね。 でも美味そうなオーラは伝わっているのか、まりさの口からは滝のようなよだれが溢れている。まだこんなに水分持ってたのか。 野菜などを盗んで食べたことがあるのだろう、人間の食べ物の美味しさを知っているらしいまりさの頭の中では、 この未知のごちそうに対する期待がハイパーインフレを起こしているに違いない。そんなご覧の有様だった。 「そしてもう一方はご注文の品、蜂の巣フルコースだ! これに目を付けるとはお目が高い! かく言う俺も大好物、健康食としてのブームも起きているハチノコから、今日は良いとこばかり厳選したよ!」 「ゆ、ゆわあああああああああ!!!これはまりさのごはんだよ!!ぜっっっっっっったいにあげないよ!!!!」 まるまると太ったハチノコと琥珀色のソースを前に、まりさの思考餡子はショート寸前。 とうとう涙まで流し始めた。そりゃ数日間待ちに待ったごちそうが来たんだから無理もないだろう。 まあこいつの涙もよだれもベタベタした砂糖水には違い無いからどっちでも良いんだけどね。 「さあ今夜のご注文は、DOCCHI!?」 「ゆゆーん!どっちもたべるよ!!はやくたべさせてね!!」 「ブブー、ダメでーす。どっちか一方だけでーす」 「ゆゆ゛っ!?どうしてなの!!まりさおなかすいてるっていってるの!! かわいそうなまりさをいーこいーこしないとだめでしょ!!おにいさんのぶんもちょうだいね!!」 自分に優しくしてくれない愚かな人間を前に、体を膨らませてぷんぷんと怒っている。 あー憎たらしいったらない。 「俺の分なんて無いでーす。俺さっきおせち料理たらふく食ったのでもうお腹一杯でーす。 選ばれなかった方はゴミ箱に捨ててきまーす」 「ど、どぼじでぞんなごどずるの!!すてるならちょうだいよ゛おおぉぉぉぉ!!」 「嫌でーす。ちなみにどっちも選ぶ気が無いならどっちも捨ててくる。で食べるの? 食べないの?」 「ゆ・・・ゆっくりえらんでたべるよ!!すてちゃだめだよ!!すてないでね!!」 ついに折れたまりさ。そりゃそうだよね。 物欲しそうに口をあんぐりと開き、「ゆっ・・・ゆっ・・・」とよだれを振りまきながら両者を交互に見ている。 マンゴーの輝き……蜂蜜の照り返し…… プリンのアール……ハチノコの丸まり…… 芳醇な香り……懐かしき日のにほひ…… 「ゆっ・・・どっちをたべようかな・・・まりさのおいしいおいしいごはん・・・・・」 未知の究極と既知の至高、両雄がまりさの餡子の中で一進一退の攻防を繰り広げる。 これは、まりさのごはんだ……しかしどちらかしか食べられない……どちらを食べるか……どちらもまりさのごはん…… まりさの思考は入り口のあたりでずっとループしていた。まあ人間じゃないんだからこんなもんである。 「ゆゆゆ・・・・どっちもすっっっっっっごくおいしそうだよおぉぉ〜〜〜!! むーしゃむーしゃしたら、ぜったいしあわせ〜〜〜!!になれるよぉ〜〜〜〜!!ゆわわああぁぁ〜〜〜!!」 食べた時の幸福を想像しただけで、まりさの全身には凄まじいゆっくりが駆け巡っているようだ。 まりさの口内はよだれが溜まり過ぎて、金魚が泳げそうな様相を呈している。しかし目は笑ってないんだぜ。 金魚って砂糖水の中で生きられるんでしょうか? そんなくだらない疑問すら浮かんだ。 「ははははちのこさん、ゆっくりしていってね!!まんごーさんもゆゆゆゆっくりしていってね!!!!」 お、今日初めてのゆっくりコールが炸裂した。この声掛けの意味は全く解らないけどな。 しかし、まりさはしきりに両方のごはんに媚を売っている。 これは何かゆっくりなりの哲学に基づいた行動なのか? 全く解らない。ごはんの方に選んで貰おうと思っているのだろうか。 さて、そんな風にグダグダと悩み続けること数時間。 結論から言うと、まりさはどちらも選びきれずに餓死した。 彼女の姿を見て賢者は、「我々人類もこのゆっくりと同じだ。迷いを捨てなければ真の幸福は掴めないのだ」などとのたまう。 しかし俺は思う。奴は誇り高かったと。 どちらも譲れぬ、生の最期の瞬間までその信念を貫いた。 何かを生かすということは、何かを殺すということなのだ。 だから皆さん、時にはこんな選択肢があっても良いのではないでしょうか? 実験結果! おせちも良いけどカレーもね♪
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「ゆっくり~~♪ していってね~~~♪」 「「「ゆっくり~~♪ していってね~~~~♪」」」 「きょうもにこにこひゃっくてんだよ!!!」 ここに一つのゆっくり霊夢一家がいる。 親である霊夢と子供が十数匹の標準的な家族である。 その親霊夢を先頭に、向かっているのは人間の里。 「ゆっゆ♪ ゆゆゆ♪」 ご機嫌な様子で歩いていくお母さん霊夢。 何がそんなにうれしいのか、その答えは今しばらくすればわかるのであろう。 「ゆっゆ♪ ちゅいたよ♪」 「それじゃあ!! ゆっきゅりしようにぇ!!」 「「「「ゆっきゅりしゅるよぉ~~~~~!!!!」」」」 あるモノは廊下を走り回り、またあるモノは畳の上でごろごろと転がる。 ゆっくりにしてみれば、ゆっくり遊んでいるのであろうが、ここは人間の家である。 人間の家はゆっくり出来るものが沢山ある。 それは『この一家ならずも知っていること。 そして、この一家はゆっくりするためにここに入り込んだのだ。 そして、珍しいことに一家は、何一つ家の備品に触れてはいない。 ただ転がって遊んでいるだけなのである。 「お前ら!! ここで何をしてるんだ!!!」 仕事から帰ってきた男は、無人のはずの我が家から聞こえてきた声に驚いた。 しかし、すぐにその声の正体が分かると、怒りに身を任せて家の中に入り込んでいった。 「ゆゆ!! おにーーさんおかえりなさい!!」 「「「おっかえりなっしゃ~~~~~い♪」」」 男の緊迫した声とは対照的に、一家はのほほんとした口調で男を出迎えた。 「おい!! ここが誰の家だか分かってるのか!!」 「ここはおにーさんのいえだよ!!」 「……分かってるのか?」 自分の予想が外れた男は、呆気にとられ一度怒りを忘れたようだ。 「ゆっゆ!! れいむはあたまのいいゆっくりだから、きちんとわかってるよ!!」 「れーみゅたち、おにーさんのおうちのものさわってないよ!!」 「たべものもたべてにゃいよ!!」 「ちかきゅのきゃわで、かりゃだをありゃってきたから、きれいだよ!!」 「ゆっゆ♪ れいむたちはなにもわるいことしてないよ!!! だから、おこらないでね♪ おにーーさん!!」 「ほー……。そうか、それは偉いなぁ~~」 感心したように、うんうんと首を振りながら一家に語りかける。 「ゆっゆ♪ えらいでしょ♪ ごほーーびにすこしたべものちょ~~だい♪」 「んなわけあるかーーーーーー!!!!!」 ごぶ。 と鈍い音と共にお母さん霊夢に鉄拳が振り下ろされる。 「と゛う゛し゛て゛ーーー!!! れいむたちなにもわるいごとしてないよぉーー!!!」 「「「おがーーしゃーーん!!!」」」 口から餡子を吐き出しながらも、男に向かって非難ともとれるような言葉を投げかける。 「おかーしゃんだいじょーぶ?」 「あたみゃいたいいたいにょ?」 「れーみゅが、いちゃいのいちゃいのとんできぇーー!! してあげりゅりょ!!」 重症を負った母親のもとへ集まった子供達が、文字通り男の事を忘れ必死に手当てをしようとする。 「こらこら。無視はよくないぞ♪」 「ゆゆ!! ゆっくりはなしちぇね!!」 「ゆ!! いもーとをはなしてね!!」 一転、母親もろとも男のほうへ振り向き、声を上げて男とその手にもたれた赤ちゃんに呼びかける。 「はい!! ここで問題です!!」 小さい子を黙らせるように、大きな声で言い放った男は、手にしたゆっくりを握りながら、さらに説明を続けた。 「今から、お兄さんが君達に質問をします。その質問の中で、『悪いこと・うそ』があったらこの赤ちゃんは朝食に嬉しい、おいしいおいしい餡ペーストになってしまいます!!!」 「ゆ!! ゆ~~~~♪」 何だ、そんなことか、とでも言いたげな一家。 何しろ、自分達は頭の良い、良いゆっくりなのだ。 きっと、馬鹿なゆっくり達はここで間違ったことを言って殺されてしまったのだろう。 これをきちんと答えれば、この人間もきちんと分かってくれる。 もしかしたら、お家で飼ってくれるかもしれない。 一度みた、あの金ぴかに輝くバッジを自分達も付けて歩けるかもしれない。 「ゆっゆ♪」 「ゆきゅ~~~♪」 周りを見ると、子供達も母親と同じ事を考えているようで、なんとも緊張感のない表情をしている。 「ゆっくりきっちりりかいしたよ!! おにーさんはやくもんだいをだしてね!!」 「「「「だちちぇねーーー!!!」」」」 すでに勝った気でいる一家、その一家に男はゆっくりと問題を発表した。 「第一問!! 勝手に人のおうちに入るのは良いことかな?」 「「「こたえは、のーだよ!!」」」 「正解!! では第二問!! 君達は何で人のおうちに勝手に入ってきたのかな?」 「「「ゆっゆ♪ れいむたちはわるいことしてないよ♪」」」 「ダウト!!」 「んじゃらっぺいぽんち!!!」 ニコニコしている一家に、握った右手を近づけて一気に握り潰す。 くぐもった悲鳴が聞こえた後、どろっとした餡子が流れ落ちていく。 「ゆ!! れいむのあ゛か゛ぢゃ゛ん゛がーー!! どーーじでこんなごとするのーー!!」 「あかちゃんが、いたいいたいになっちゃったー!!」 「ゆぐぅーーー!!!!!!」 騒然となる一家。 そんなことはお構いなしに、男は二匹目の赤ちゃんを掴み、問題を再開する。 「第三問!! 君達は勝手に人間の家に入った?」 「ゆー……。あがじゃんがーー!! いだいいだいになっじゃったー!!」 「ゆっぐり、かわいいあかちゃんが……」 「……西村因みに、答えなくてもおいしー朝食餡ペーストになります」 「「「ゆっぐりかってにはいったよ!!!!」」」 「正解!! では第四問!! 勝手に家に入るのは悪いゆっくり、間違いないね!!」 「「「ゆっくりまちがいないよ!!」」」 「正解!! ではでは、最終問題!!!」 「ゆ……」 緊張していた一家からため息が漏れる。 後一問、それだけで自分達は解放される。 もう人間の里に近づくのはよそう。 良い事をしたのに、こんな目に合わせる人間とはゆっくりできない。 森に帰ったら、ゆっくりと暮らそう。 「じゃじゃん!!」 その前に、この問題をさっさと片付けよう。 「悪いゆっくりは一匹残らず駆除する!!!」 「ゆ?」 「「「ゆゆゆ!!!」」」 一家の表情が曇る。 確かに、悪いゆっくりはそうしても良い。 でも、確かさっき自分達は、かってに家に入るゆっくりは悪いゆっくりだ、と言った気がする。 つまり、自分達は悪いゆっくりになる。 だったら、自分達も駆除させる。 「どうしたの? この子、朝食に出してもいいの? 食物繊維たっぷりのおいしー餡ペーストになるよ」 「ゆぐぐ……」 「「「ゆーーーー……」」」 残された一家は答えられなかった。 答えたら、自分達は多分死ぬ。 おそらく、ちょーしょくにあんぺーすととして出されるのだろう。 しかし、黙っているか、うそを言えば、死ぬのは今男に握られている赤ちゃんゆっくりだけだ。 そうだ!! うそを言えば良いんだ。 悪いのは、人間に捕まったあの赤ちゃんだけだ。 よし、うそを言おう。 「……」 「「「ゆ!!」」」 無言の母親の視線でも、こういう場合の考えは一緒なのだろう。 全員が全員、こくりと頷き男のほうに向き直る。 「だ「しょうだよ!! わりゅいゆっきゅりはいっぴきのこりゃずくじょすりゅんだよ!!」 ゆゆ!!」 だめだよ!! と言おうとした一家より、一瞬誰かが答えた。 答えた主を探そうとする一家だが、全員首を横に振り、関係ないという意思を表示する。 となると、残された選択肢は一つ。 「おかーーしゃんがいちゅもいっちぇたもにょ!! わるいゆっきゅりはみんなしんでいいって!!!」 「「「「と゛う゛し゛て゛ぞんなごというのーーー!!!!!」」」」 全員が、男の、その手のひらに乗せられている赤ちゃんに向かって声を荒げる。 「ゆ? じゃって、おかーしゃんたちなかなきゃこたえないかりゃ、れいむいたいいたいしたくなきゃったもん!!」 プクーと頬を膨らませて、一家を見下ろしながら答える赤ちゃん霊夢。 「そうそう。えらいな~~♪ ちゃんと分かってるじゃないか」 「ゆっゆ♪」 そうして、その霊夢の頭をなでながら優しく語りかえる男。 この位置からでは赤ちゃんには見えないが、一家には男の顔が見えた。 まさに、一家にどのような処罰を与えようか考えている顔であった。 ~~~~~ ここは加工場の一室。 毎日限定生産される家族饅頭セットの備蓄室である。 「ゆっくり……」 この一室の新たな主は一つの霊夢一家。 普通なら、暴れまわるこの一家だが、一匹を除きその様な気は起きないらしい。 「ゆっきゅりだちてにぇ!!」 必死に騒いでいるのは赤ちゃん霊夢だった。 あっちの壁に体当たりしたかと思えば、こちらの扉に体当たり。 「……」 大きな個体が生気を失ったように佇むなか、赤ちゃんが行うその行為は、まさに奇妙なものだ。 「ゆ!! れーみゅたちはわりゅいことしちぇないよ!!」 「…………」 「おかーーしゃん!! れーみゅたちわりゅいことしちぇないんだかりゃ、はやくここきゃらでて、おうちかえりょーね!!!」 「……ゆっくり……そうだね……」 「ゆっきゅりだちてにぇ!! れーみゅたいはいいゆっきゅりだよ!! おかーーしゃん、いちゃいいちゃいだかりゃ、はやくかえらしぇちぇね!!!」 「「「…………」」」 いよいよ出荷されるその日、その赤ちゃん霊夢は最後の最後で自身の罪を知り、どの家族よりも絶望して逝ったという。 まるでアクセントのように、一部に強力な甘さの餡子を残して。 ~おまけ~ 「うーー!! れ☆み☆りゃ☆はこうまかんのおぜーーさまなんだぞーーー!!!」 そう叫ぶゆっくりれみりゃがいるのは間違いなく紅魔館の玄関であった。 庭に住んでいるものがまた勝手に入ってきたのだろう。 「う~~!!!! う~~~!!!」 調度品を見て、奇声をあげるその姿は、お嬢様らしからぬモノであるが。 「う~~~!! れみりゃはおなかがすいたーーー!! さくやーー!! さくやぁ~~~?」 一転、笑顔になったれみりゃが声を張り上げ食事を要求するが、ゆっくりに食べ物を与える輩はここにはいない。 「うーーー。うーー!! うう!!」 スカートの裾をぎゅ♪ っと掴んで涙を浮かべていたれみりゃだったが、何を思ったかスッと近くの部屋から怪獣の気ぐるみを持って戻ってきた。 「うっう~~♪」 お気に入りの気ぐるみを貸してあげるから、早く出て来い!! と言うことらしいが、あいにく酔っ払いでもしない限りそんな趣味の悪いものなんて着たくない。 痺れを切らしたれみりゃは、テコテコと自分の足で食べ物を探し始める。 「うぎゃ!! うーー!! うーーー!!」 途中何も無い所で転び、目に涙を浮かべ口を結び、まさに今にも泣き出しそうな事もあった。 「うーーー……、おなかへっだーーー……」 が、泣くのを堪えて再びよろよろと館内の捜索に戻った。 それから、幾分の時間が過ぎ、ある大きな入り口の前を通りかかった時、れみりゃはそこから大勢の声と、食べ物の匂いを感じる事が出来た。 「うーー!! ごはんたべりゅーーー!! おかしもってきてぇーーー!!」 既に疲れきったれみりゃは、近くにいた女性に声をかけると、うんちょ♪ と台の上に飛び、木製のベッドに横になり目を瞑った。 「う~~~……う~~~~……」 直ぐにうとうとし始める、幸せそうに口元から涎を垂らして。 「……あら、今日の夕ご飯はれみりゃだったかしら?」 「う~~……!! うあーー!! うあーーーー!!!」 疑問系で、しかもいまいち確証が無いにも拘らずテキパキとれみりゃを捌いていく。 「やめでーーー!! れみりゃなのーー!! れみりゃーーー!! はやくやめるのーーー!!!」 「……そーらのかなたに♪ みーちるひーぃかり♪」 れみりゃの言葉は一切聞かずに、鼻歌を歌いながら調理を進めていく。 「うぎゃーー!! れみりゃのあしがーー!! さぐやーー!! だすげでーー!!」 「まじかる♪・さく「んじゃーーー!! ああーーーーー!!! うあーーーー!!!」」 ……。 「今日は少しおかずが多いんじゃないかしら?」 「そうですか? でも食べ切れますよね?」 「それは、そうだけれども……」 「なら問題ないですね」 「はぁ……」 このSSに感想を付ける
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前編 「ゆ~……ゆ~…………ゆっ?」 ある朝、ゆっくり魔理沙が目を覚ますと、見知らぬ場所に居た。いつもの家ではない。 白い壁に覆われて、真ん中に一本の柱が立っているだけの無味乾燥な部屋だ。 不安になって周囲を見ると、おにいさんが座っていた。そして、近寄っていつもの言葉を言う。 「いぬみたいにいうこときくから、ゆっくりさせてね!」 この一言から、ゆっくり魔理沙の一日は始まる。しかし、いつもなら来るはずのおにいさんの返事がなかった。 「ゆっ? おにいさん、どうしたの? だいじょうぶ!?」 もう一度呼びかけてから、身体を揺すると、ようやくおにいさんは反応を示した。 「……魔理沙か」 「まりさだよ! ゆっくりいうこときくね!」 こう言うと、直ぐに何々をしろ、と言われるはずなのに、またしても様子がおかしいままだった。 「魔理沙、俺はもう、駄目だ……」 「ゆゆ!?」 見ると、おにいさんの身体からは赤い水のようなものが流れている。 「どうしたの、なにかでてるよ!?」 「これは、お前たちでいうところの餡子だ」 「ゆぅぅ!? あんこがでちゃだめだよ! はやくもどして!」 諦めたように笑うおにいさん。 「俺は、もう駄目だ。血……いや餡子が多く出すぎた。もう長くない」 神妙な面持ちで話を聞くゆっくり魔理沙。 「だから……あそこを見ろ」 「ゆっ?」 おにいさんが指差したほうを見ると、二つの扉が開け放たれている。 「左に行くと、俺を助けられる人がいる。右に行くと……外に出られる」 「ゆ、おそと……!」 そと、それは甘美な響きであった。良いゆっくりになろうとしたのも、ひとえに外に出たいがためだった。 「魔理沙、お前が選べ。俺を助けるか、外に出るか。どうやったら、良いゆっくりになれるのか」 「でも、くびわが……」 身体にくいこんだままの『首輪』を気にする。これがある限り、いつ死んでもおかしくないのだ。 「大丈夫だ。どっちを選んでも『首輪』は簡単に外れる」 「れ、れいむは? れいむはどこにいったの?」 「それは分からない。どこかに連れて行かれたのかもしれないし、助けを呼びに行ってるのかもしれない」 「ゆゆゆ……」 ゆっくり魔理沙は悩んだ。今まで一緒だったれいむのことも気になったし、おにいさんが死んでしまいそうなことも気になった。 どうすればいいのか分からない。おにいさんに聞いてみても「お前が選べ」としか言わない。 そこで、ゆっくり魔理沙は閃いた。もう、おにいさんは死んでしまう寸前なのだ、と。だから「命令」も出せないのだ。 だったら、助けを呼んでもその間に死んでしまうだろう。それよりも早くれいむを見つけてあげたい。 もしかしたら泣いているかもしれないし、死んでしまっているかもしれないのだ。 やがて、ゆっくり魔理沙は決めた。もう『首輪』は大丈夫であり、おにいさんは駄目だ。なられいむを探しに行こうと。 「おにいさん、ごめ~んね! まりさは、れいむをさがしにいくよ! ゆっくりしんでいってね!」 おにいさんに最後の言葉を投げつけて、思い切り走り出す。 ゆっくり魔理沙は思う。まずはれいむを探すのだ。れいむを見つけて、その後はゆっくりできるおうちも探す。 食べ物もいっぱい集めて、ふたりの子供もたくさん欲しい。たくさん、たくさんゆっくりするのだ。 高鳴る思いのまま、右側の扉へ向かって駆ける。扉からは緑色が見えてくる。そして、外の景色が――― がちゃん!! 白い壁が続く通路にゆっくり魔理沙はぐちゃり、という汚らしい音を立てて叩きつけられた。 『首輪』も遅れて通路に落ちていった。 「ふぅ……今回は一匹だけか」 座った状態から立ち上がり、軽く背伸びをする。座っているのもそれなりに疲れるのだ。 歩いてゆっくり魔理沙の所へと向かう。『首輪』に引っ張られたことで中身が飛び散っている。 「おい、生きてるか」 「ゆ、っぐりぃ! どぼじでぇ!どぼじでぇぇえぇ!」 生きているようだ。ずいぶんとしぶとい。後頭部の辺りから餡子を撒き散らしていてもまだ喋れるらしい。 「何が、どうしたんだ」 「お゛ぞどぉ゛! ぐびわ゛ぁ゛!」 涙なのか、苦痛なのか分からない叫び声をあげている。 疑問に一つ一つ答えてやることにやろう。どうせ、死ぬ身だ。閻魔様への土産は必要だろうから。 「右の扉は外に続いているが、本当の出口はもっと奥だ。ここはガラスがあるから、外の景色が見えているだけだ」 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆぅ!」 ショックのためか、餡子を出しすぎているためか、ゆっくり魔理沙は痙攣し始めている。まずいな、早く説明してやらねば。 「左の扉に行けば、俺が操作して『首輪』を外した。だが、お前は右に行ったから『首輪』を外さなかった」 「ゆっ……」 「お前が本当に『良い』ゆっくりがどうかを試したんだ。そして、お前は『良い』ゆっくりにはなれなかった」 俺を助けに行っていればこんなことにはならなかったのにな、と付け加える。 その時、ゆっくり魔理沙の頭の中はぐるぐると渦巻いていた。 どうして、どうして、こんな風になったのか。れいむはどこにいったのか。 自分はどんな風になっているのか。いたいいたいいたいしんでしまう。 だれかたすけてれいむたすけておにいさんたすけて。 良いゆっくりになるから良いゆっくりでいさせてゆっくりさせて。 なりたくないあれにはなりたくないあれになったら死んでしまう。 いやだいやだいやだいやだくびわやだあれになるのはいや。 「魔理沙、お前は『悪い』ゆっくりになったんだよ。だから―――ゆっくり死ね」 「い゛や゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 わるいゆっくりには、なりたくなかった。 俺は血糊を吹いて、部屋から出た。 「おつかれっす」 「どうも。今回は一匹だけですいません」 加工場の馴染みの職員と挨拶を交わす。 「いや、今回のヤツはアクが強いってんで、一匹も無理じゃないかって皆で賭けてたんっすよ」 「ほほう、それで?」 「オレの一人勝ちっす! ま、賭けてた商品がゆっくりなんで、あんまありがたくないっすけど」 「それは確かにありがたくないですね。おっと、少し失礼」 職員との話を切って、ゆっくり霊夢の所に向かう。最後までちゃんと調教しなくてはいけない。 ゆっくり霊夢は部屋で起きていたことを全て見ていた。今も友人の死体を見て呆然としている。 魔理沙側からは見えないが、霊夢側からは見えるという、マジックミラーというものだ。 「良かったな霊夢。これでようやく『良い』ゆっくりになれるぞ」 「な゛ん゛でぇ゛」 嬉しくないのだろうか、あれだけなりたがっていたのに。まあ、無理もないが。 「どう゛じでぇ゛! ま゛り゛ざじん゛ぢゃ゛っだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉっ!」 「魔理沙は最後の最後で『良い』ゆっくりになれなかった。だから、餡子をぶちまけて、死んだ」 ゆっくりにも分かるように、噛んで含めるように言う。これはこれで最後となるだろう。 「どぼじでぇ!? ま゛り゛ざば」 「人間の言うことを聞かない『悪い』ゆっくりになった。俺を助けなかったというのは、そういうことだ」 あれこそが最終試験。調教要件は「如何なる場合でも言うこときくゆっくり」であったからだ。 ゆっくり霊夢は『悪いゆっくり』という単語に身を震わせる。ほとんど条件反射のようなものだ。 「霊夢、お前は犬のように人間の言うことをきく『良い』ゆっくりだ。言うことを聞いていれば」 ゆっくり魔理沙の残骸を見せつける。 「あんな風には、ならない」 「れ゛い゛む゛は゛い゛い゛ゆ゛っぐり゛でず! な゛ん゛でも゛、い゛ぬ゛み゛だい゛に゛い゛う゛ごどぎぎま゛ずぅ!」 これにて、調教完了である。俺の仕事もようやく終わった。 職員にゆっくり霊夢を引き渡し、いくつかの諸注意を与える。 言うことを聞かせたら、たまに食事を与えること。 「犬みたいに」という言葉を使えば、大概のことはする。 そして、 「時々、あれをいじっておいてください。大丈夫だと思いますが、念のため」 「はあ……しかし、あんな棒切れで本当に大丈夫なんすか?」 ゆっくり霊夢は『首輪』が既に外されており、代わりに『首輪』で空いた穴へ棒が突っ込んであった。 「体内に異物が入ってる限りは言うことをきかねばならない、という条件付けしてあるので、大丈夫ですよ」 異物といっても、そこそこ大きさがあればなんでも良い。ゆっくり霊夢が錯覚さえすればそれでいいのだ。 一応、他のゆっくりに不審がられないようにあまり長くないものを差し込んである。表面から少し出てる程度の長さだ。 職員の手に持たれたまま、ゆっくり霊夢はまだ泣いている。 「じゃあな。加工所で『良い』ゆっくりとして頑張っていけ」 「な゛ん゛で、ごんなどごにお゛い゛でぐの゛ぉ!?」 加工所は危ない、『悪い』ゆっくりは加工所で殺される、と徹底的に調教したためか、加工所にはいたくないらしい。 「なんか、泣いてますけど?」 「調教し終わったゆっくりが何を言おうが知ったことではないですよ」 無視して、歩いていく。報酬は後で請求しておかなければいけない。 「ごごい゛や゛ぁあ゛あ゛ぁぁ! い゛ぬ゛みだいに、い゛う゛ごど、ぎぎま゛ずからぁ! づれ゛でっでぐだざいぃぃぃぃっ!!」 ……いい加減、うっとおしい。今度こそ本当に最後の言葉を伝えてやらねばなるまい。 「黙っとけ。俺は犬よりも猫の方が好きなんだ」 俺の言葉で「ゆ゛っ!」と一度鳴いた後、黙り込むゆっくり霊夢。 調教したゆっくりが実験や牧羊犬、または繁殖用に使われようが、どうでもよかった。 背中にゆっくりの恨みがましい視線を浴びながら、帰りの途につく。 いつか猫でも飼ってみるか、などと俺は益体もないことをなんとなく考えていたのであった。 どうでもいい後書き 前編と後編に分けてみたけれど、分量が違ってしまったのが残念。もう少し均等にしたかった。 調教っぷりが足りてないなぁ、と切に感じるね。 あんな風に書いるけど、犬は嫌いじゃないよ。猫も嫌いじゃないけど。 あと、ゆっくりも好き。むしろ好きでなければこんな話書けるわけがない。 好きだから、つい殺っちゃうんだ♪ ってな具合。 「首輪」なる代物を出してみたけれど、こんなの誰でも考えつきそうなので勝手に使って構いません。 爆弾型の首輪を使ったSSがあったら、むしろ見てみたい。誰か書いて。 「~こわい」でシリーズ化してみようかとも思ったけど、書き続けられる自信がないのでやらない。やれない。 眠いせいか、支離滅裂で脊髄反射的な後書きですいません。 このSSに感想を付ける